コラムNo.286 生産性を落とすマニュアル

 あなたの会社に、前回の会議で決定したことを蒸し返す人はいませんか? あるいは、文書の細かい言葉遣いにこだわったり、重要ではない書類の仕上がりを完璧にしようとしたり、重要な業務を差し置いて会議をしたり、指揮命令系統を厳格に守ることで仕事が進まなかったり…。

 

 ひょっとしたら、その人はCIAのスパイかもしれません…。冗談はさておき、CIAの前身組織OSSが1944年1月に作成し、2008年に公開された「サボタージュマニュアル(Simple Sabotage Field Manual)」をご存じでしょうか。

 

 これはトンデモ話でも何でもなく、実際CIAに公式文書として保管してあります。CIAの諜報員が敵国内の組織活動を妨害し、生産性を落とすためのマニュアルです。ちなみに冒頭の行動はそれぞれマニュアルに記載されている妨害行為の例です。今でも普通にありそうな場面ですね。

 

 他にも、もっともらしい理由を付けてペーパーワークを増やす、重要な仕事は後回しにする、意思統一のために長時間議論させる、延々と不備の指摘をするなど、どこかで見た、聞いたことのあるような「非生産的な」行動がマニュアル化されています。いわゆる「大企業病」にするためのマニュアルです。大企業病と言っても、小規模な組織でも発生する可能性はあります。

 

 あなたの会社ではどうでしょうか。CIAのスパイが潜入していませんか。それとも、CIA並みの実力を持った社員が同様の行為を行っていないでしょうか。私がこのマニュアルを見て感じるのは、わざわざスパイを送り込まなくても、大半の組織は自然と非生産的になって自滅の道を辿っているのではないか、ということです。

 

 大抵の場合、やっている本人には生産性を落としている自覚はなく、むしろ良かれと思って上記の行動を繰り返します。その結果、組織は弱体化し、会社であればじわじわと衰退に向かって進んでいくのです。

 

 この道を進まないためにやるべきことは多々あります。そのうちの一つは「組織の新陳代謝」です。要は人を入れ替える。誤解を恐れずに言えば、同じ会社に何十年もいるベテラン社員に現状を変える力はありません。長年の経験から積み上げた価値観や、それに基づいた行動は変わらないと思った方がいいでしょう。彼らにとっては今が普通の状態であり、手段が目的化していることに気がついていないのです。

 

 したがって、余計な考えや行動が身についていない、フレッシュな人材を常に一定数迎え入れる。これが重要です。人間の細胞も日々少しずつ入れ替わり、数年で細胞の大半が入れ替わると言われています。年齢を重ねるとその速度は段々と遅くなり、いわゆる「老化」が進んでいきます。

 

 組織も同様で、「老化」すると一般的に動きが遅くなり、柔軟性がなくなります。大企業病に加え、老化まで進むと手に負えません。その二つを同時に予防するためには、先述の「組織の新陳代謝」が最も効果的です。

 

 なお、「組織の新陳代謝」は人を入れ替えるとともに、組織のルールも変える必要があります。現場目線から言えば、この点が一番難しいのではないでしょうか。とはいえ、何もしなければ組織は必ず弱体化します。

 

 現場から自然に変わることはありません。変えることができるのは社長だけです。ぜひあなたが率先して変わる覚悟を見せ、新陳代謝を促してください。組織の生産性を落とし、破綻に導くのは、CIAのスパイよりも身近な人間である可能性が高いのです。

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