
「ファミマ、コンビニバイトに給与前払い制度」2022年7月22日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「ファミリーマートは9月、コンビニエンスストアで働くアルバイトなどが給料日前に給与を受け取れる制度を導入する。」としています。
伊藤忠商事の子会社であるマネーコミュニケーションズのアプリ「プリポケ」を使用し、従業員は実際に働いた分の給与を任意のタイミングで受け取れます。最大7割の前払いが可能とのこと。ちなみにファミリーマートも伊藤忠商事の子会社です。
前払い制度を導入する理由として、労働力人口が減少していく中、新たな人材の獲得と定着率向上につなげるため、またフリーランスやギグワーカーなどの多様な働き方、それぞれのライフサイクルに合わせた働きやすい環境を整えるためとしています。
プリポケには、「立替払い型」と「直接払い型」という2つのサービスがあります。「立替払い型」はプリポケ側が立て替える形で従業員に振込み、前払申請額の1.5%が手数料となります。「直接払い型」はクライアント企業の口座から振り込む形をとり、月額利用料が10000円、手数料は1回あたり200円となっています。
ファミリーマートは立替払い型サービスを導入する方向で、手数料1.5%に関しては加盟店、従業員どちらが負担するかは加盟店に委ねられています。
さて、給与前払いサービスは今回のプリポケ以外にも20社以上が参入しています。各社それぞれが顧客企業数を増やし、市場規模も拡大しつつあります。それだけ世間のニーズが多く、サービスが支持されている証拠なのでしょう。
給与前払いサービス各社が制度導入のメリットとして挙げているのが、求人応募者数の増加、離職率の低下です。いずれも、“働いた分をすぐにもらいたい”アルバイト従業員に対してポジティブな影響がみられているとのこと。
ただし、この先大半の企業が前払いサービスを導入するのは間違いないでしょう。そうなると他との違いはなくなり、結局は仕事の本質的な部分が選ばれる理由となります。
給与や福利厚生のような、いわゆる衛生要因(不満足度に関わる要因。これを満たしても不満足が解消されるだけで、仕事に対する満足度が上がるわけではない)を満たすことにフォーカスしてもすぐに陳腐化します。すぐにそれが「当たり前」となってしまうのです。
他社との差別化を図るためには動機づけ要因(満足度に関わる要因。達成、承認、やりがいなど)を満たす環境づくりをする必要があります。
衛生要因と動機づけ要因は別物です。衛生要因を満たしても満足にはつながりません。不満が解消するだけで動機づけにはつながらないのです。前払いサービスはあくまで衛生要因を満たすサービスなのです。
衛生要因を満たすことは従業員の定着率を向上させるための必要条件ではありますが、それだけでは定着率も上がりません。繰り返しになりますが、従業員に達成する喜び、承認される安心感、仕事に対するやりがいなどの動機づけ要因が得られる環境を整備することが定着率向上には必須です。翻って、それを言語化し、外部に伝えることは経営者の最も需要な仕事の一つと言えます。
経営者の皆さん。衛生要因、動機づけ要因を理解し、それに則った仕組みをつくるようにしましょう。いずれかだけでバランスを欠いた体制では、組織の継続が難しくなります。

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