
「国産人気ウイスキーが酒屋から消えた…定価2倍超の取引実態も サントリー『困惑している』」2023年7月30日、弁護士ドットコムニュースはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「『山崎』『白州』『竹鶴』など、国産人気ウイスキーの品不足が続いている。酒屋やスーパーに並ぶのはレアで、抽選販売やほかの銘柄とのセット販売を行っている店もある」としています。
10年ほど前までは普通に買えたウイスキーですが、ここ3~4年で状況は一変。店頭で買うのは困難になり、冒頭のように抽選販売での購入が日常の光景となりました。国産ウイスキー不足の理由として、国際的品評会の受賞による世界的評価の向上、朝ドラ効果、ハイボールブームなどが挙げられています。
日本におけるウイスキーの販売量は1989年のピーク(233000kl)から2008年(75000kl)までは減少傾向にありましたが、そこからV字回復し2021年には168000klになっています。また、輸出量も販売量と同時期に伸び始め、2021年には12860klと爆発的に増えています。ちなみに輸出ウイスキーの単価は2000年が656円/l、2021年は3678円/lと6倍になっています。
さて、私も最近はハイボールを嗜むようになりました(どうでもいいですが)。実際、会食時にはビールを飲む人が減っているのを実感します(ビール出荷量は1994年から14年連続で右肩下がりの過去最低。発泡酒等も含む。19年以降は発表中止)。
日本のアルコール消費量を見てみましょう。厚生労働省(e-ヘルスネット)によれば、「日本では、戦後の経済発展もあり90年代後半まで飲酒量は増大してきましたが、近年は高齢化の進展もあり頭打ちあるいは低下傾向となっており、成人一人当たりのアルコール消費量でみると平成4年度の101.8lをピークに78.2l(2019年度)まで減少してきています」とのこと。
日本全体のアルコール消費量を合算すれば、2020年で8140000klです。実はウイスキーの消費量はその中のわずか2%程度。近年ハイボールを飲む人が増えたと言っても、全体で見ればかなりの少数派です。急激に増えたと言っても1%から2%になったくらい。まあ、アルコール度数が高いので量としては増えにくいと思いますが。
ということで、ウイスキー人気がいくら上がったと言っても、全体で見ればそこまでの規模ではない。ごく一部の急激な変化にフォーカスされ、全体としても状況が大きく変わっていると思ってしまう。もちろん、多少の影響はありますが、全体を揺るがす程度の影響ではない。
この点、ニュースバリューがあるのはどんなジャンルでも、「新規性」や「意外性」、「特異性」「影響度」などです。で、さらに人を惹きつけるのは良いニュースよりも「悪いニュース」です。重大事件や事故、災害をはじめ、増税や値上げなども悪いニュースの部類でしょう。今回のニュースも「品不足」「値上げ」ですね。
当然、マスコミは世間の反応が取れる(収益に直結する)ニュースを扱いたいので、結果、多くの情報が「悪いニュース」で埋められます。しかも普段ではなかなかない極端なケースも多く、そんなニュースばかり見ていると間違いなく判断基準は偏ります。
経営者の皆さん。物事は必ず俯瞰(視座を高め、視野を広げる)して見るようにしましょう。マスコミの情報(特にテレビ)はごく一部の特殊な出来事の集まりです。今回のウイスキーもいずれ問題は解消します。というより、その前に多くの人が状況に慣れ、忘れてしまいます。表面的な出来事に流されることなく、常に「本質は何か」を捉えて行動するようにしましょう。

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