
「箱根の高級旅館が繰り出す『人手不足』解決の秘策」2023年10月29日、東洋経済オンラインはこう題した記事を掲載しました。記事では、高級旅館円かの杜(まどかのもり)の特徴的な“ある仕組み”について取り上げています。
記事によれば、「通常の旅館やホテルは宿泊客からの予約があり、その予約数に応じて従業員のシフトを組んでいる。だが、円かの杜の発想はその真逆だ。先に従業員のシフトを決め、その日の従業員の出勤状況に合わせて客室の稼働数を変動させている」とのこと。
まさに逆転の発想。この仕組みは非常に優れていると思います。顧客のニーズに応じた対応をするのがサービスの基本ですが、当旅館は顧客の方に合わせてもらう。普通では思いつかないやり方です。
そもそも商売の定石として、大半の宿泊施設では「稼働率」がKPI(重要業績指標)になっています。収益最大化のために「稼働率」を最大限上げることを目標にします。ただ、現在は“超”人手不足。宿泊客が大挙して押し寄せても「キャパオーバー」で回せない。部屋にいくら空きがあっても断らざるを得ない状況なのです。
著名な観光地などでは、人材が手当てできればコロナ前を軽く超えるほど稼げる状態です。しかしそれができない。当事者としては嬉しい悲鳴どころか、抜本的な解決策がなく、めちゃくちゃストレスがたまる状況だと思われます。
そんな中「円かの杜」は厳しい状況の“裏をかく”戦略で成果を残しています。というよりも、一面では「このやり方しか取れなかった」のかもしれません。客単価の高い箱根の高級旅館だからこそできる仕組みとも言えるでしょう。
それでも、私たちが参考にできる部分は多々あります。特に顧客と密接に関わり、「接遇」が必要な業種では本気で導入を考えてもいい仕組みではないでしょうか。
現在の人手不足は本当に深刻で、廃業の要因にもなっています。「円かの杜」に関しても、今は「従業員をいかに雇うか」ではなく、「従業員をいかに辞めさせないか」に重きを置いています。本記事の仕組みが構築された背景には、「人事方針の変更」という大きな意思決定もあったのです。
おもてなしやホスピタリティが必要な業種は、従業員の習熟度が特に重要です。「ベテランの力」が業績を左右します。いかに長く続けてもらえるか。これは事業の根幹に関わる最重要事項と言えるでしょう。
「円かの杜」の仕組みは付加価値を上げることで、稼働率に頼らずとも収益性が上がる可能性もあります。この点、「人によるサービス」を何でもかんでも自動化や機械化し、無人にすることが解決策とはなりません。皆さんの会社でも「逆転の発想」をしてみてはいかがでしょうか。

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