
「平均年収460万円は「実感」とはほど遠い? 実は6割が平均以下の「真実」 1千万円プレーヤーは増加で広がる貧富の差」2025年5月27日、AERA DIGITALはこう題した記事を掲載しました。
記事タイトルの通り、日本の平均年収は460万円です。ただし、国税庁の統計をよく見ると年収400万円以下の人が全体の半分強、460万円に届かない人は6割近くもいます。つまり平均額は、年収1千万円超の高所得層が押し上げた“見かけの値”にすぎません。
名目賃金が少しずつ増えているように見えても、物価の伸びがそれ以上では実質的な手取りは減ります。厚生労働省によれば、2024年の実質賃金は前年比0.2%減で3年連続マイナス。家計の体感が「生活がラクにならない」ままなのは、統計にも裏付けられています。
そして社会を支えるエッセンシャルワーカーの賃金は、全体平均よりさらに厳しい状況です。
特養で働く常勤介護職員の平均月給は33万8,200円(年換算約406万円)で、前年より1.3万円ほど伸びたものの、夜勤や身体介助の負荷を考えると十分とは言えません。しかも人手不足が深刻になるほど残業が増え、離職で現場が回らなくなる悪循環に陥っています。
賃金が上がりにくい背景には三つの壁があります。
第一に介護報酬や保育料のような公定価格制で、事業者が自由に価格を改定できないこと。第二に「値上げ=生活コスト上昇」という社会的抵抗感が強く、価格転嫁が難しいこと。
第三にケアや保育は成果を数値化しづらく、交渉力が弱いため生産性向上が扱いにくいことです。
これらが重なり、需要は高いのに賃金が伸びないという逆説が生まれています。
改善の動きもあります。2023年度の地域別最低賃金は全国平均1,004円と初めて1,000円を超え、政府は全国加重平均1,500円を「2020年代中に達成する」と公言しました。
最低賃金が横並びで底上げされれば、「賃上げ(=値上げ)したら客を取られる」という不安は薄れます。同時に介護分野では月額6,000円相当のベースアップ支援も始まっています。
企業側にも打ち手はあります。たとえば介護現場で記録を音声入力やAIへ切り替えれば、1日30分の事務時間削減は難しくありません。人時生産性が15%上がれば、そのぶんを処遇に回す余地が生まれます。
また「生活賃金宣言(企業や個人が、労働者とその家族が十分な生活水準を維持するために必要な賃金を支払うことを公約する宣言)」を掲げ、値上げ分が賃上げに直結することを利用者に伝えると、少額の価格改定でも納得してもらいやすくなります。
求人票に「夜勤手当は法定のさらに1.25倍上乗せ」「年次昇給3%保証」など具体的な数字を明示すれば、応募者が長期的なキャリアを描きやすく、人材定着率も上がります。
結局、賃金原資は「付加価値×分配率」で決まります。付加価値が低いと感じたら、サービスに付帯価値を付けて単価を見直すチャンスです。
訪問介護に簡易リハビリを組み込む、保育に英語プログラムを加える――月額数千円の上乗せでも、その収入をスタッフに還元すれば働き手の意欲は高まり、サービス品質も向上します。
「平均460万円」という数字の裏側には、見えにくい現場の苦労があります。エッセンシャルワーカーの賃上げはコスト増ではなく、“社会インフラへの投資”と捉え直すことが大切です。
安さの陰で誰かが疲弊していないかを点検し、企業も利用者も「適正な対価」で支え合う。その視点が、持続可能なビジネスと暮らしの鍵になります。

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