コラムNo.857 作るよりも売ることが大事

私自身がアパレル業界、また中小企業診断士(経営コンサルタント)の仕事を通して痛感していることがあります。それは「作るより売る方が圧倒的に難しい」ということです。

 

つまるところ、作るより“売る方が何倍も大事”なのです。もちろん、ものづくりの大変さは重々承知していますが、作っても売れなければ意味がない。それどころか、過剰在庫は経営を悪化させ、世の中にムダな負荷をかけてしまいます。

 

この点、アパレル業界は常に過剰在庫が溢れています。日本では1年間で約79万トンの衣服が処分される。そのうち、リサイクルや再利用に回されず、ごみとして焼却処分されてしまう衣服は約63%。

 

数で言えば毎年29億着が作られ、そのうち15億着が捨てられています。これは、4tトラック12万台分にのぼります。

 

アパレル業界でよく見られる他社やトレンドへの追随。一つの戦術と言えないこともないですが、一方で「自ら売ること」を放棄したやり方です。要は売れそうだから作る。つまり他力本願。

 

商品開発には、プロダクトアウト(顧客が「まだ気づいていない体験」を先に形にして市場を切り開くアプローチ)とマーケットイン(顧客が何を求めているかを徹底的に調べ、そのニーズに合わせて商品やサービスを作るアプローチ)という考え方があります。

 

どちらが良い悪いはなく、どちらも大事な考え方です。

 

ただ、勘違いしないでください。プロダクトアウトは自分が作りたいから作るのではなく、またマーケットインは流行っているから作るのではありません。先述のアパレル業界のやり方は一見マーケットインに見えますが、本来的な意味のマーケットインとは言えないでしょう。

 

翻って、商品開発は「市場の成熟度」と「模倣困難性」の掛け算で方針が決まります。

 

まだ競合が少なく独自資源が大きいときはプロダクトアウトが効き、日清「カップヌードル」やソニー「ウォークマン」のように誰も想像していなかった体験を先に形にして市場そのものを生み出せます。

 

反対に、商品や価格が出そろった成熟市場ではマーケットインが有利で、コンビニ各社が健康志向の声を受けて開発した「サラダチキン」や、スターバックスがアプリの購買データで季節ごとにヒットさせる新フラペチーノのように、顧客の細かな要望を拾って改良するとヒットにつながります。

 

いずれの場合も最終的な勝敗を分けるのは製造と営業(マーケティング)の連携です。開発が現場の声を直接吸い上げ、営業が技術の制約を理解すれば、プロダクトアウトで生まれた種をマーケットインのデータで素早く磨き上げる高速サイクルが回り、長期的に競争優位を保てます。

 

これは中小企業や個人事業主にも言えることで、単に自分が作りたいから、自分が得意だからと自分本位で開発した商品は売れにくく、流行市場に賑わっているからと短絡的に参入してもやはり売るのに苦労する。

 

いずれにしても、「自らどう売るか」の出口戦略を徹底的に考えて商品開発をする必要があります。

 

私自身も独立当初、自分の経験や得意なことのみにフォーカスしてサービスを開発しましたが、やはり大苦戦しました。結局「お客様のお困りごと」の視点がまるごと抜け落ちていて、誰からも必要とされていなかった。

 

経営者の皆さん。まずは「どう売るか」を念頭に置きましょう。作るよりも売る方が何倍も難しく、そして何倍も大切です。プロダクトアウトとマーケットインの考え方を踏まえ、「作る」だけではなく「作って売る」のサイクルを回すことが商売の鉄則です。

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