
「仕事で成し遂げたいことは「安定生活」」
(新入社員意識調査2025(ALL DIFFERENT株式会社 2025年6月5日)
1974年生まれの私が社会に出た頃、日本はまだ「人がいる国」でした。学校も職場も人が溢れていて、選抜されることが当たり前の時代。
ところがいま、昨年生まれた子どもたちの数は、私たちの世代の3分の1程度(出生数:1974年203万人 → 2024年68.6万人)にまで落ち込んでいます。これは“少子化”という言葉では到底収まりきらない、構造的な変化です。
この30年で、日本は「人がいない国」へと急速にシフトしています。生産年齢人口は減り、都市部を除けば若者そのものがほとんど存在しない地域も珍しくありません。当然、企業の採用環境は厳しさを増し、単に「採れない」だけでなく、「質的な低下」への懸念も高まっています。
周囲でも、「昔なら絶対に無理だった学校に、今は普通に受かる」という話を耳にするようになりました。もちろん学習指導や教育課程の変化もあるでしょうが、絶対数の低下と相まって、いわゆる“上位層”の人数も減少しているのは明らかです。これは大手企業でさえ実感していることですから、中小企業にとってはなおさら深刻な問題です。
こうした中、ALL DIFFERENT株式会社の「新入社員意識調査2025」では、今年の新入社員の意識に大きな変化があることが明らかになりました。仕事を通じて成し遂げたいことの第1位は「安定した生活」(65.6%)で、過去最高。一方で、「自分を成長させたい」は過去最低の50.1%でした。つまり、そもそも“成長欲求が強い人材”の割合も減少しているのです。
人が減り、質も低下し、価値観も変わる。これが2025年の採用と人材育成の現実です。
では、この現実に対して企業はどう向き合えばよいのでしょうか?
まず一つ確かなのは、「母集団を広げればどうにかなる」という時代は終わった、ということです。数の勝負はもう成立しません。これからの人材戦略には、“希少な人材をどう活かすか”という視点が不可欠です。つまり、「量の確保」から「個への深い投資」へと、発想を根本的に転換する必要があります。
採用時点で“完成品”を求めるのではなく、組織が“育てる力”を備えること。そして、価値観の違いを否定するのではなく、共に学び、伸ばし合う文化を醸成すること。中小企業こそ、この“組織としての学習力”が問われているのです。
もう一つ大切なのは、「優秀な人材」という定義を再考することです。かつてのように高学歴・高スキル=優秀ではなく、いま必要なのは「共に成長しようとする意欲」と「対話できる柔軟性」です。数値化しにくいこの資質を見抜き、育て、定着させることが、これからの経営者の真の腕の見せどころと言えるでしょう。
今の若者は、決してやる気がないわけではありません。不確実な時代を生き抜く中で、「確実な幸せ」を選びたいだけなのです。私たち経営者やリーダーが、それを“逃げ”ではなく“現実的な選択”として受け止め、彼らが安心して成長できる土壌を整えること。それが、人口減少時代の企業に求められる、新しいリーダーシップのかたちではないでしょうか。

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