
先日ある病院を受診しました。医師は症状を詳しく聞いてくれず、PCの画面を見たまま一度も目を合わせない。要領を得ない説明の末に薬を出され、あっけなく診察は終了。
結局、検査結果の説明もなかったので、自分でさっさとウェブ検索でもしたほうがよかったかもしれません。専門的な正しさと目の前の個人の感情。このすり合わせを行うことこそ、プロに求められる仕事だと私は考えています。
「自分の存在を軽く扱われた」という負の感情は、業種を問わずあらゆるクレームの根本的な原因となります。この点、中小企業に寄せられるお叱りの声を分析してみると、ある事実に気づかされます。
クレームの多くは商品やサービスの欠陥そのものではありません。顧客を激怒させる本当の引き金は、ほぼすべて「人による対応のまずさ」にあります。
目を合わせない、言葉尻がきつい、こちらの話を聞かずに一方的に話を進める。こうしたコミュニケーション不全は「自己重要感」を著しく傷つけます。多くの人にとって最も我慢ならない感覚です。
一昔前であれば、不快な思いをしたお客様は黙って他店へ移るだけでした。しかし今はGoogleマップなどのクチコミによって、現場のコミュニケーションのまずさが残酷なほど簡単に世間へ共有されてしまいます。
ネットに悪評が並んでから慌てても手遅れです。経営者が社内で「お客様に寄り添おう」と精神論を説いても意味がありません。経営者はとにかく現場へ足を運び、スタッフがどんな対応をしているか自分の目で見る、そして地道な改善をするほかないのです。
当面の防衛策として有効なのは、最低限の「動作」を徹底してマニュアル化することです。「心を込めろ」といった内面への指導はまったく伝わらないでしょう。逆に今の時代はハラスメントと受け取られかねず、反発を生むだけです。
「会話の最初は手を止めて相手の顔を見ながら挨拶をする」といった行動だけを業務のルールとして厳守させます。形だけでも接遇の型を守らせれば、お客様の自己重要感が無駄に傷つくことは防げます。
しかし、マニュアルはあくまで対症療法にすぎません。根本的な解決策は、結局のところ「採用」の段階に立ち返ることです。自社の理念をベースに、目の前の一個人に向き合える人間を入り口で選ぶしかありません。
面接で見極めるべき絶対的な基準とは何か。様々なノウハウが存在しますが、最後は経営者自身の直感や相性に行き着きます。身も蓋もない言い方をしてしまえば、経営者の「好き嫌い」です。
面接の短い時間の中で、経営者自身が「なんとなく合わない」「好きになれない」と感じた人間は、高い確率でお客様のことも不快にさせます。人手不足だからと妥協して採用すれば、必ず後悔することになります(私も少なからず経験しました)。
人間の本質は変わりません。であればこそ自分の直感を信じて、本当に好きだと思える理念を共有できる仲間だけを採用する。相性の良いメンバーと笑って働くことが、最も確実なクレームへの対応策になります。

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