ニュースの論点No.936 職場のムダな習慣

Z世代が選んだビジネス「10の謎習慣」ハンコ書類、休日社員旅行…」2026228日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。

 

「ビジネスの謎習慣」として、上司が帰るまで帰れない雰囲気、有休申請時の謝罪、ハンコ必須の紙書類など、若手社員が時代遅れだと感じる職場の慣習がランキング形式で挙げられています。

 

これを見て、「確かに非効率だ」「若者の言う通りに変えなければ」と感じる経営者の方も多いかもしれません。しかし、若手社員の意見にただ同調し、これらを単なる「ムダ」と切り捨ててしまうことには、少し立ち止まって考える必要があります。

 

世間では「Z世代は合理的だ」とよく言われます。確かに彼らはデジタルツールを使いこなし、無駄な時間を省くことに長けています。しかし、彼らの言う「合理性」とは、個人の業務範囲や自分の時間に限られた、局所的で短期的なものになりがちです。

 

たとえば、面識のない相手への「お世話になっております」という定型文や、先輩からの食事の誘いを「タイパ(タイムパフォーマンス)が悪い」と敬遠する傾向があります。一見すると効率的ですが、組織全体で見るとどうでしょうか。

 

一見ムダに思える雑談や飲み会、形式的な挨拶の裏には、いざという時の「阿吽の呼吸」や、仕事を進めやすくするための「信頼関係の貯金」を築くという重要な目的がありました。これらをすべて放棄することは、長期的な組織力としてはマイナスになり得ます。

 

一方で、上の世代が「昔からこうやってきた」と守り続けている習慣の多くも、決して手放しで肯定できるものではありません。終身雇用や右肩上がりの経済成長、そして対面コミュニケーションが前提だった時代の「賞味期限切れの経験則」も少なくないからです。

 

休日の社員旅行や上司を介さないと上の役職者と話せない階層構造などは、かつては組織の結束力を高め、意思決定のリスクを減らす安全装置として機能していました。しかし、働く価値観やツールが激変した現代において、同じ手法は通用しません。

 

今起きている世代間の摩擦の正体は、「若手の局所的なタイパ至上主義」と「上の世代の賞味期限切れの経験則」の衝突です。目的は同じでも、それを実現するための手段が時代と決定的にズレてしまっていることが、お互いの不満を生み出しているのです。

 

では、経営者はこの問題にどう向き合うべきか。若者に迎合してすべてをデジタル化しドライな組織にする必要もなければ、昔のやり方を無理に強要する必要もありません。求められるのは、古い習慣に隠されていた「真の目的」を見極めることです。

 

人間関係の構築や情報共有、組織への帰属意識といった「本来の目的」は維持しつつ、その「手段」を現代に合わせてアップデートしていく。たとえば、夜の飲み会の代わりに、業務時間内のランチミーティングや1on1ミーティングを導入するのも一案です。

 

また、無駄なハンコや待機時間はきっちり廃止して業務を効率化する一方で、チャットツール上で気軽に称賛や意見交換ができるオープンな空気を作ることも重要です。形式へのこだわりを捨て、本質的なコミュニケーションの質を高める工夫が求められます。

 

職場の「謎習慣」は、単なるムダではなく、組織のあり方を見直すための重要なサインです。世代間のズレを対立として捉えるのではなく、自社が本当に大切にしたい価値観を再定義し、新しい形へと進化させる契機として活かしてみてはいかがでしょうか。

 

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