
「背が高い木の代表格であるスギやヒノキの平均樹高は20m前後です。世界一高い木の高さはその3倍を超えるでしょうか?」
皆さんも考えてみてください。
答えは「超える」です。世界一高い木はアメリカ・カリフォルニア州のレッドウッド国立公園にある「ハイペリオン(Hyperion セコイア:ヒノキ科セコイア属)」で、高さは約115.92メートル。平均の6倍近くあります。
ちなみに日本一高い木は京都市左京区の大悲山国有林にある「花脊(はなせ)の三本杉」で、高さは62.3メートルとなっています。これでも3倍以上。
この問題を出すと、大半の人は「超えない」という回答をされます。平均の20mでも高そうなのに、さすがにその3倍はないだろう。あっても4,50mくらいでは…。となる方が多いようです。
比較的新しい分野の学問として、「行動経済学」があります。これまで経済学で使われた「完全に合理的な人間像」ではなく、非合理的な人間の心理を組み合わせ、より実態に即したアプローチをする学問です。
ちなみに冒頭の問題は、行動経済学でも扱われる「アンカリング効果」を使って私が作成しました。
アンカリング効果は、最初に提示された情報がその後の判断に影響を与える現象です。アンカー(基準点)となる情報が、後続の判断や意思決定に強い影響を及ぼします。
今回の問題では、「20m」がアンカーとなっています。さらに、「3倍」も付け加え、2重のアンカーで回答を誘導する形です。回答者の頭の中では、さすがに「60m」は現実的ではない…と、半ば自動的に判断されます。
アンカリング効果はビジネスでも多くの場面で使われています。代表的な例は「値引き販売」です。
たとえば、アパレル店で10000円と表示されたシャツ。お客様に「ちょっと高いな」…と思われています。
一方で、同じ商品でも元値が20000円、その半額で10000円と表示があった場合、「お、安いじゃないか」と判断は覆ります(不当表示に注意)。
交渉ごとでも、最初に提示する条件は非常に重要な「アンカー」となります。価格や量、期限など、すべて最初の数字に引っ張られてしまうのです。つまり、大半の交渉ごとでは、「最初に条件を提示すべき」。
「先手必勝」は多くの場面で使われる言葉ですが、最初に与えられる情報は人間にとって想像以上の強い影響があります。
アンカリング効果は日常のあらゆるところで使われていますが、「悪用」も多数されています。事実ではない数字を提示し、あたかも安く、あるいは効果が高いように見せている広告も少なくありません。
行動経済学は人間の「影響の受けやすさ」言い換えれば「騙されやすさ」を可視化しました。経営者の皆さん。私たちはビジネスへの健全な利用をすることはもちろん、自分自身が騙されないためにも行動経済学の基本的知識は持っておきましょう。

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