コラムNo.953 買い物が終わらない

週末に冷蔵庫や洗濯機などの家電をまとめて買い換えました。それなりに値が張る買い物なので、お店側もさまざまな特典を用意してくれています。結果的には、総額でかなり安く買うことができました。

ただ、すべての決済と手続きを終えて店を出るまでに、5時間近くかかりました。無事に安く買えたという満足感はありますが、休日の大半が削られたことへの徒労感が残ったのも事実です。

言うまでもないことですが、家電量販店はテーマパークではありません。テーマパークなら長く滞在する時間そのものに価値があります。でも、実用品を買うために時間を奪われるのはただの苦痛です。

求める結果を、いかに短時間でストレスなく提供できるか。それも大切なサービスの一つです。どれほど安くなっても、お客の貴重な時間を奪う仕組みが顧客目線とは言えない気がします。

複雑な特典が「時間」と「思考」を奪う

なぜ買い物だけでこれほど時間がかかったのか。理由は、特典や割引の条件が複雑すぎたからです。家電を見ていたはずが、携帯キャリアの乗り換えを提案され、ウォーターサーバーの案内まで始まりました。

そこに「3点以上買ったら割引」という条件や、同じ製品でも時期によって価格が違うというキャンペーンまで絡んできます。まるでパズルのようで、本来の定価や相場がいくらなのか見失ってしまいます。

今提示されている価格が本当に妥当なのか、買い物をしながら基準がわからなくなってきました。まあ人によって最適なプランが異なるのはわかります。

とはいえ、何をどう買えば正解なのかという道案内がないまま、選択肢だけを並べられては迷います。お客が自分で一つひとつ解きほぐさなければならない環境は、やはり買い物がしづらい。

現場の良心と、店頭のダークパターン

昔に比べて良くなったと感じる部分もありました。よくわからないまま無駄なサービスを押し付けられることはなく、加入が必須なアプリや保険も「明日以降に解約して構いません」と丁寧な説明がありました。

お客の負担を少しでも減らそうという、現場スタッフの配慮はしっかりと伝わってきます。ただその一方で、事務手数料などの細かい金額についての説明漏れがありました。

意図的かミスかはわかりませんが、支払いの段になって聞いていない費用が出てくると、どうしてもお店への不信感につながります。

ウェブ上では消費者を迷わせるダークパターンがよく問題視されますが、リアルな店頭でも同じように、お客を煙に巻くような仕組みができあがっています。現場の接客態度は良くなっていても、料金体系や仕組みの根底にはまだ改善すべき部分が多いように感じました。

「シンプル」という中小企業の武器

大手企業は、巨大なシステムを使って複雑なセット販売を組み、利益を最大化しようとします。しかし、私たち中小企業がこの複雑なゲームに付き合い、同じ土俵で戦う必要はどこにもありません。

私たちが提供できる価値は「シンプル・イズ・ベスト」です。誰が見てもパッとわかる料金体系にし、隠れた手数料などの不透明な部分をなくす。それだけでも、お客にとっては安心できる立派な差別化になります。

選ぶ疲れを感じさせず、最適な選択肢へ迷わずたどり着ける道案内を用意すること。お客の「時間」と「考える労力」を奪わない姿勢こそが、情報が多すぎる現代では強力な武器になります。

自社の価格設定やサービスは、気づかないうちにお客を迷わせていないでしょうか。不要な複雑さを手放し、シンプルに徹する。そんな引き算の視点を持つだけでも、顧客体験はもっと良くなるはずです。

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