ニュースの論点No.199 あなたの仕事はどんな価値を生んでいますか

 「阪急阪神百、全従業員にスマホ」2021214日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「阪急阪神百貨店は3月までにアルバイトを除く全従業員約4800人に業務用スマートフォンを配布する。800通りを超す掛け紙(のし紙)の使い方、金券のおつりの有無など煩雑な業務をスマホですぐ確認できる。」としています。

 

 その他にも、紙での経費精算やホワイトボードでの予定共有を効率化するためにスマホを活用するとのこと。また、朝礼での連絡事項をメール送信することで「朝礼の時間を販売トレーニングなどもっと有意義なことに使える」とあります。

 

 …………かなり失礼な物言いになりますが、私に言わせればこれは典型的な対症療法だと思います。対症療法にすらなっていないかもしれません。極論すれば何の意味もない施策で、ムダな投資となる可能性があります。

 

 私も百貨店での仕事を実際にしており、また周囲から様々な話を耳にします。私の実感として(周囲の声を聞いても)、とにかく恐竜の如く動きが遅く、新しいものを取り入れるスピードが遅い。意思決定の遅さも言わずもがな。いざ取り入れたと思ったら今回のような、業務自体はそのままで中途半端にスマホ導入、表面的な「勘違い生産性向上」に走ってしまう。

 

 ちなみに、とある百貨店では未だに紙ベースでの提出物は当たり前で、回覧板方式も少なくありません(なかなか回ってこない)。朝礼も形式だけ、連絡事項を伝えるだけで集まる意味はなし。担当者の印鑑が無ければ物事が進まない(緊急でも担当者が休みだと翌日に!)。他にもいろいろ…

 

 今回のスマホ導入については百貨店に限らず、老舗でありがちな対策であり、どんな業種でも気をつけるべきことだと強く思います。多少の改善は見込めるかもしれませんが、おそらく最終的にはやってもやらなくても同様の結果となるでしょう。はっきり言えば、スマホを配布するだけで接客の価値は上がりませんし、売上にも貢献しません。

 

 そもそも800通りを超す「のし紙」がお客様から必要とされているのか、そのサービスに価値はあるのか、金券のおつりの有無を気にするお客様がどれだけ存在するのか、いたとして販売員はそれぐらい覚えられないのか、大体いつまで集中レジなどと言う時代錯誤で面倒で、お客のためにはまったくならない仕組みにしておくのか…  ついでに言えば、「百貨店の価値の源泉」とは、品揃えはもとより、販売員の知識や接客技術、ホスピタリティではなかったか…

 

 わからないことをスマホで調べるスタッフにお客がどれほどの価値を感じるのかは人それぞれです。ただ、私だったら自分で調べるでしょう。不安ですから。自分で調べたほうが早いのもありますね。記事中には、「覚えるのに苦慮していた」、問い合わせが「接客に時間がかかる要因となっていた」とあります。多様な業務が販売員に過大な負担を強いているのかもしれません。しかし、販売員の努力も必要でしょう。どんな理由であれ、お客様の邪魔をしているようでは価値を毀損していることになります。

 

 とにかく、本気で生産性を向上するのであれば、現在の業務を根本から見直さないと絶対に効果は出ません。スマホを導入する前に、まずは価値を生まない業務はすべて無くすことが先決です。800通りもあるのし紙も問題ですが、それよりも価値を全く生んでいない役職者のために用意された業務がその最たるものです。この削減だけで、中途半端な投資をせずとも利益向上につながります。これは百貨店だけではなくどの業種でも同様です。コロナ危機は、「業務改革」する企業にとっては大きなチャンスとなり得ます。

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