ニュースの論点No.201 Zoom成功の理由

 「Zoom、リアルに商機 オフィス回帰を支援」202133日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「世界のワクチン接種回数は2月末までに24400万回を超えた。変異ウイルスへの懸念はあるもの、米国では学校や店舗の再開が広がっている。潮目の変化をとらえてズームが力を入れ始めたのが、オフィスへの安全な復帰を支援する事業だ」としています。

 

 ズームの具体的施策は、スマートフォンで端末に触れずに操作可能にしたり、カメラで人数のチェックをしたり、非対面での来客受付したり‥などの機能を用意しているとのこと。機能だけ聞くと何だか普通、というか今さら感のあるものですね。

 

 ズームの211月期の売上は26億ドルで前年比4.3倍となっています。221月期の売上見込みは37億ドルと伸び率は減少するも、まだまだ成長は継続する見通しが立てられています。ズームはコロナ前から注目はされていましたが、いわゆる「コロナ銘柄」としてリモートワークの広がりとともに爆発的に利用者を増やしました。

 

 ただ、記事にもある通り、徐々に日常が戻りつつあります。記事中にもありますが、コロナ後は「30%の企業がオフィスに戻り、60%は出社と在宅勤務を組み合わせ、10%がリモートワークを続ける」との予測が米調査会社からなされています。しかし、私の勝手な予測では60%がオフィスに戻り、30%が出社と在宅勤務の組み合わせ、10%がリモートとなるイメージです(当たるも八卦)。

 

 リモートワークの必要がなくなれば、プランの解約数も増えるでしょう。私も年間プランで契約していますが、必要性が無ければ当然ですが解約します。したがって、これまで獲得した顧客をどうグリップしていくかがズームの喫緊の課題となりそうです。

 

 ところで、ズームはなぜここまで爆発的に広がったのでしょうか。似たような機能のアプリは他にもありましたし、その後も他社が追随して開発、同様の機能は世の中に溢れました。もちろん、選ばれる理由に機能的な側面もあるでしょう。ただ、それだけでは説明がつきません。

 

 「なぜ流行ったか」については後付けで様々な理由が語られますが、ここでは「ネットワーク外部性」で説明したいと思います(これも後付け)。ネットワーク外部性とは、同じ商品やサービスを使う個人の数が増えれば増えるほど、その商品やサービスから得られる便益が増加する現象です。

 

 ネットワーク外部性の一番わかりやすい例は電話です。一人しか使っていなければ何の意味もないサービスですが、数十人、数百人が使うとその便益は飛躍的に向上します。SNSもまったく同じ理由で一つ二つのサービスが一気に拡大していきます。日本ではLINEの例がわかりやすいですね。

 

 繰り返しますがズームが機能的に使いやすい面も当然選ばれた理由の一つではあります。それに加えてネットワーク外部性を味方につけるには、競合に先んじてどれだけ顧客を取り込むことができるかがかなり重要なポイントとなるのです。ちなみに電子マネーPayPayの初動を覚えていますか? あれだけわかりやすい例はないと思います。まずは利用者を増やすことの重要性をわかって先行投資しているのです。

 

 一度ネットワーク外部性が働きだすと、そのネットワークからは抜けにくくなります。皆が使っていますからね。自分だけ違うサービスでは周りが不便を感じます。さらに皆が使うと飛び交う情報量が増え、サービスは必然的に向上していきます。つまりサービス提供者は基本的に「先手必勝」が常だということです。

 

 ネットワーク外部性の他にも、「流行る理由」としては心理学で言われる、皆が使っているから使いたくなる「バンドワゴン効果」や、成功は成功を呼び、富める者はさらに富む「優先的選択」または「マタイ効果」と呼ばれる現象で説明できます。

 

 ただし、いくら理屈が分かっていても、かなりの割合で「時の運」が作用するため、狙って成功することがなかなか難しいのは言うまでもありません。こちらでコントロールできることは残念ながら少ないのです。

 

しかし、唯一コントロールできることがあります。それは「打席に立つ回数」つまり「チャレンジ数」です。これについては「やる」か「やらないか」をすべて自分で決めることができます。経営者である以上、一度や二度の失敗で挫けることなくチャレンジを続けていきたいものです。

    今週の経営コラムを無料でお届け 無料メールマガジン登録はこちら
    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!

    コメント

    コメントする

    目次