ニュースの論点No.203 100円の功罪

 「ダイソー、脱100均店舗 巣ごもり需要に対応」2021314日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「100円均一最大手のダイソーを運営する大創産業は割高の雑貨に絞った新タイプの店舗を出店する。価格帯は3001000円で、巣ごもりで需要が高まる収納箱や食器などを中心にそろえる」としています。

 

 大創産業の売上高は5015億円(20203月)、国内のダイソー店舗は3493店舗(直営2646、代理店847)、海外2248店舗となっています。100円ショップ直営1号店は1991年高松にオープンし、今年でちょうど30年になります。

 

 1号店のオープン以来、路面店やインショップなどあらゆる場所に出店し、みるみるうちに店舗数は増えていきました。皆さんのお住いの近くにもあるのではないでしょうか。すでに日本のインフラとなり、「一度も買ったことがない」という人は相当珍しい部類に入ると思われます。ちなみに私も結構利用します。

 

 有望な市場ですから当然競合も現れ、現在ではダイソーに加え、セリア(売上高1814億円、店舗数1679店、203月現在)、キャンドゥ(売上高730億円、店舗数1079店、2011月現在)、ワッツ(売上高527億円、店舗数1355店、208月現在)が大手4社として100円ショップ業界をけん引しています。

 

 市場規模は10数年以上堅調に推移しており、現在主要4社で約8000億円となっています。さらにこの1年はコロナ禍による巣ごもり需要で、業界全体でも過去最高を更新することがほぼ確実となっています。

 

 ただ、100円ショップ各社は中国や東南アジアなどで生産、輸入することでコストを抑え、価格を維持していましたが、賃金コストの上昇、輸送費の高騰が利益を圧迫し、収益性を悪化させつつありました。本記事のダイソーの戦略はこの流れから出てきたものであり、競合他社も同様に高価格帯商品の展開を増やしつつあります。既存の100円ショップでも300円や500円の商品が目に付くようになりましたよね。

 

 強引にまとめれば、100円ショップでは売上は伸びても利益が出ないので、高価格業態の展開でより儲かる事業構造にするということです。外部環境の変化を考えれば、当然の帰結だと思います。そもそもダイソーはTHREEPPYという300円ショップをすでに展開し、205月には株式会社ビルジャンから300円ショップ「CouCou」事業を譲り受けるなどしていました。

 

 ということで既定路線ともとれる今回の動きですが、さて今後はどうなるでしょうか。「これが100円?!」という驚きと商品量で日本のインフラともいえる存在となった100円ショップ。それが300円以上の高価格帯(それでも安いですが)にも市場を広げていく戦略が吉と出るか凶と出るか。

 

 いずれにしても、「100円」という価格が維持できなくなりつつあるのは間違いありません。一方で100円が当たり前になった消費者のマインドは簡単には変わらず、100円ショップ需要が無くなることはないでしょう。企業側としては価格を上げていきたいが、消費者のニーズはもっと低価格のもの… 本記事から、日本のデフレの象徴ともいえる業態のターニングポイントが感じ取れました。

 

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