ニュースの論点No.225 このシワ寄せはどこに

 「政府、デパ地下に入場制限要請 外出半減も呼び掛け」2021817日、共同通信社はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「政府は17日、新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長や対象地域拡大に合わせ、感染対策の指針『基本的対処方針』を改定した」としています。

 

 基本的対処方針では、ショッピングモールなど床面積が1000平方メートルを超える大型商業施設や、デパ地下と呼ばれる百貨店の食品売り場を入場制限要請の対象とし、加えて混雑した場所への外出半減も呼びかけるとのこと。

 

 百貨店の主な感染状況を確認しておくと、阪急うめだ本店では、727日から816日までに89人のクラスターが発生しています。また、阪神梅田本店でも726日から88日までに145人のクラスターが発生。いずれも地下1階食品売り場や1階での感染が大半を占めており、今回の基本的対処方針改定につながっています。

 

 大阪だけでなく、東京でも伊勢丹新宿店では729日から84日までの間に81人が感染。こちらも地下1階食品売り場の従業員が多数を占めているとのこと。ちなみに伊勢丹では自主的にPCR検査を受ける場合は、結果判明の2日前から休むように取引先の外部社員にルールを示しているそうです。

 

 伊勢丹は様々な理由からこの2日前ルールをつくったと思われますが、現場で店舗を回している人間から見れば印象はよくありません。これは外部社員を守るというより、自社の保身、つまり百貨店としていかにクラスターを「表に」出さないか、が優先されているとしか思えません。クラスターが発生した場合、企業イメージの悪化、業務停止による減収、療養や自粛による人手不足など多大なリスクが考えられ、百貨店としては絶対に避けたい状況なのです。

 

 ちなみにPCR陽性者に関しては、発症日(発症していなければ検査日)から2日前までの間で濃厚接触者の追跡がなされます(伊勢丹の2日前ルールにすれば、検査の結果陽性であっても百貨店での濃厚接触者はゼロ)。そうなるとほとんどの場合芋づる式に濃厚接触者が増え、濃厚接触者が多ければ陽性になる人も確率的に増えていきます。陽性であれば当然療養中は隔離され、陰性でも濃厚接触者であれば14日間の行動自粛が求められます

 

 これが数十人、数百人になると、どんな業種でも仕事は回りません。人が表に立つ労働集約的な百貨店ビジネスではこの「人」の部分がやはり大きなリスク要因となるのは間違いない事実です。

 

 現状、百貨店を含めた大型商業施設では相当ナーバスな状態になっていると思います。感染防止対策も徹底的に行っているはずですが、ここにきてクラスターが多く発生し、対応にも相当苦慮し大変な状況だと察します。おまけに冒頭のように政府からの入場制限要請もあったのですから、なかなか厳しい状況と言えるでしょう。

 

 といいつつも、私が実際に百貨店やショッピングセンターに店舗を構えている中で感じるのは、今回のコロナ騒動でも何でも、有事の際は各店舗を「トカゲのしっぽ切り」のごとく切り捨てる百貨店やデベロッパーの「冷たさ」です。すべての店舗ではありませんが、少しばかり隠蔽体質も感じています。

 

 百貨店やデベロッパーのような場所貸業の方々は、自社の社員でないテナントの外部社員に対して、常に上から目線ですべての決定権が自分たちにある前提で接します(すべてではありませんが)。決めるだけ決めて、あとは現場に丸投げ(解決はしない)。さらに朝令暮改は当たり前でこちらの時間やお金がムダになることも少なくありません。

 

 厳しい状況だとは思いますが、ぜひ百貨店等の方々には、リスクの高い現場の最前線で頑張る外部社員を本気で守ってほしいと切に願います。お客さまとの「接点」、つまり現場のスタッフが百貨店の強みなのですから。

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