
「社員が社員を雇用 ヘアカットQBハウスで異様な契約が問題に」2022年3月19日、Yahooニュースはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「同社では一部店舗の理髪師をQB本社が雇用するのではなく、エリアマネージャーが雇用する形式をとることによって、本部が雇用責任を免れていたという」とのこと。
全体像としては、QBハウス本社が個人事業主であるエリアマネージャーと業務委託契約し、そのエリアマネージャーが店舗スタッフを雇用する形になっていました。採用された店舗スタッフはその事実を知らず、QBハウス本社に雇用されていると思っていました。また、エリアマネージャーは個人事業主といっても、実質的にはQBハウスから指示命令を受ける従業員といえる状態でした。
問題点は二つ。「店舗スタッフに対し正しい労働条件明示がなされていないこと」と「エリアマネージャーに対する偽装請負」です。細かく挙げれば、有給休暇が取れないことや社会保険未加入、健康診断未実施等、相当数の問題がありますが、大きな論点としては上記の二点になるでしょう。
ここでQBハウスの店舗運営形態を確認してみます。21年6月期の有報には四つの形態が挙げられています。()は国内店舗数。
①直営・直轄店舗(394)…QBハウスグループが店舗所有かつ運営
②直営・業務委託店舗(122)…QBハウスグループが店舗所有、業務委託先が運営
③FC・直轄店舗(24)…フランチャイジー(主に鉄道子会社)が店舗所有、QBハウスグループが運営
④FC・業務委託店舗(33)…フランチャイジー(同上)が店舗所有、業務委託先が運営
今回問題になっているのは②のケースです。他のケースでも、店舗スタッフの採用時にどのような説明を行っているのか気になります。しかしながら、誰もが知る業界大手企業がなぜ今回のような杜撰なやり方をするのでしょうか。就職希望者にあえて詳しい説明をせず、ある意味「だまして」採用するのは相当なリスクがあることはわかっていたはずです。エリアマネージャーに対する業務委託も、実態として雇用と判断されるのは誰の目にも明らかです。
ここまでする目的は、おそらく「雇用リスクの軽減」です。自社で直接雇用すると社会保険等を含む人件費が増え、採用育成費も増え、解雇は簡単にできず、お金以外にも時間や労力が相当かかります。コストを下げながら事業を安定および拡大させるためには、一番の「固定費」である人件費の抑制が効果的です(理屈としては)。
とはいえ、あまりに短絡的で企業の信用すらもなくしてしまうような今回のやり方は、判断を見誤ったとしか思えません。最も価値を生んでいる現場のスタッフを無下に扱う姿勢は、顧客や株主の支持を低下させ、既存スタッフの離職を招き、今後の事業継続に大きな支障をきたすでしょう。
ちなみに業務委託契約自体は何ら悪いことではありません。ただ、今回のケースのように、制度の悪用をする企業が後を絶たないのも事実です。業種を問わず、雇用リスクを避けるために偽装請負を行うケースは少なくありません。また、経営者の無知による誤用の場合もありますが、当然知らなかったでは済まされず、法的な重大事となります。
経営者の皆さん。今の企業の姿は皆さんのあり方を映す鏡です。社内の状況を堂々と開示できるでしょうか。経営には様々なリスクがあります。リスクに対し、どう判断するかでご自身の価値基準があらわになります。ぜひ今一度、社内の状況を見直してみましょう。不安なときは一人で判断せず、専門家やパートナーの活用もすべきです。

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