ニュースの論点No.278 損失回避性

 「2割引と同じことなのに…なぜ人は『衣類5000円購入につき1000円下取り』のほうに魅力を感じるのか。」2022819日、PRESIDENTOnlineはこう題した記事を掲載しました。

 

 記事では、セブン&アイ・ホールディングス名誉会長の鈴木敏文氏の話を元に、消費者の心理や感覚に目を向けた商売のコツをまとめてあります。当時、タイトルの施策を行ったところ大ヒットし、他の店舗も追随する人気施策になったそうです。

 

 単なる2割引だと反応は弱いのですが、顧客の手持ち服を買い取ることで価値を与え、さらにタンスのスペースが空くことで購買意欲が増進する。顧客側からすれば、買い物をする正当な理由ができるので罪悪感なく買い物ができる。結果を見れば誰にでも分析できますが、この行動を予測し、幹部の反対にもめげずに実行に移したのは単純にすごいと思います。

 

 他にも、消費増税時に「5%OFF」ではなく「消費税還元セール」として高額商品が飛ぶように売れるようになった話や、有名なところでは「冬のアイス」、「夏のおでん」など、鈴木氏はこれまで常識と思われていたことを否定し、新たな価値をつくりあげる商売人として、かなりの才覚を持っていると感じます。

 

 さて、いわゆる経済学では、人間は合理的に行動する前提で理論が組み立てられています。しかしながら、実際の人間は非合理的で、説明のつかない行動をする場合がほとんどです。この点、現在では脳科学や心理を取り入れた「行動経済学」として注目を集めています。

 

 ちなみに行動経済学を著した書籍では、ノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」が有名です。上下巻ありますので、なかなかのボリュームですが、非常に有用な本です。経営者の皆さんもぜひお読みいただければと思います。

 

 行動経済学を一言で言えば、「人は都合よく解釈する」ということです。そもそも脳自体が騙されやすく、直前に聞いた言葉や音楽、数字などに左右され、自分の意思とは関係なく物事を選択する場合があります(しかも自分では気づきません)。

 

 また、行動経済学の知見の一つに、プロスペクト理論があります。この理論では、重要な考え方である「損失回避性」が説明されています。人間は利益と損失を比べた場合、損失を大きく見積もり、それを回避する行動をとってしまうのです。

 

 つまり、「損をしたくない」という気持ちが意思決定にかなり影響を与えます。この点は店舗ビジネスにおいても留意すべき考え方です。お客様には、絶対に「損をした」と思わせないようにしてください。

 

 例えば、「自分が購入した商品が翌日には安くなっていた」などは、損をしたと思わせる最悪なパターンの一つです。人によっては烈火のごとく怒ります。このお客様は当然来店しなくなり、さらにクレームが悪い噂として一気に広がっていきます。返金しても怒りが収まらないこともあります。それだけ「損失」を大きく見積もっているのです。

 

 経営者の皆さん。繰り返しになりますが、お客様には損をさせないようにしましょう。これは商売の「成功」と「失敗」を分かつ重要なポイントです。

 

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