ニュースの論点No.616 やめる本当の理由

 「転職の本当の理由、4割は会社に言わず 『だってメリットない』」202326日、朝日新聞はこう題した記事を掲載しました。

 

 人材会社エン・ジャパンが調査した結果、タイトルのように約4割の人が転職の本当の理由を伝えていないそうです。なぜ伝えないのか。「円満退社したかった」が大きな理由の一つで、「理解してもらえないと思った」や「言う必要がないと思った」も理由として挙げられています。

 

 では、本当の転職(退職)理由は何なのか。同じくエン・ジャパンの調査より、「人間関係が悪い」「給与が低い」「将来性に不安」といった項目がトップ3に並んでいます。まあ、大体はそんな感じでしょう。理由が複数にまたがる場合も多いと思います。

 

 いずれにしても本当の理由はなかなか言えないし、言っても何の得もありません。したがって、ほとんどの人は言わずに(穏便に)、適当な理由を並べてやめることを選ぶでしょう(最近では退職代行サービスもありますね)。

 

 私もアパレル小売会社を経営していますので、相当数の退職者を見てきました。酷い場合は何も言わずに会社に来なくなるケースもあります。貸与した物品も返さないまま、一切連絡が取れなくなるケースを何回も経験しました。いわゆる「非常識な人」は思った以上にいるんだな…と世間の厳しさを痛感しました。

 

 昨今、特に人手不足の業界では、常に猫の手も借りたい状態です。求人応募があったら、とりあえず誰でもいいので採用するパターンがほとんどでしょう。結果、高い確率で会社にとっては損失になるような人が入社してきます。

 

 その後は悪循環の連鎖です。私もまったく同じような経験をしています。頭数は揃っていても戦力にはならない。むしろ各方面に迷惑をかけ、売上は減りコストは増える。地獄のような状況になります。

 

 一旦このような状況になると、改善(再生)するのに相当な時間がかかります。人や仕組みを入れ替える大手術が必要で、私の場合も時間をかけて店舗の閉鎖や譲渡を行い、縮小しつつ改善を進めてきました。

 

 人材の採用や育成に失敗せず、定着率向上を実現するにはどうしたらいいでしょうか。絶対的な正解があるわけではありませんが、今回取り上げた退職理由にヒントが隠されています。3つ挙げた理由「人間関係が悪い」「給与が低い」「将来性に不安」の逆を実践すればいいのです。

 

 すなわち、「良好な人間関係」「高い給与」「明確なビジョンと成長」が実現できる環境を整える。これは経営そのものです。ちなみに、経営とは「将来をつくること」と私は定義しています。

 

 まずは目指すビジョンがあり、そのビジョンに人が集まり、社会に価値を提供することで対価を得、その対価を社内外に還元する。

 

 とにかく人が足りないから‥と採用が目的になると高い確率で失敗します。採用はあくまで手段であり、目的はビジョンの実現です。「手段の目的化」はどんな場面でも表れてきますが、こと経営においては致命的な大問題になります。経営者の皆さん。厳しい局面でこそ、判断を見誤らないように「明確なビジョン」を持ちましょう。

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