ニュースの論点No.678 価値と価格のバランス

 「1650万円の古着、誰が購入? マニア御用達の店を訪ねてみた」202395日、毎日新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「638万円のデニムジャケット、297万円のデニム地の作業着――。新潟県弥彦村の古着店「MUSHROOM」には、宝石の価格かと思うような高額商品が並ぶ。昨年秋には1650万円のジーンズが売れた」としています。

 

 販売された1650万円の古着はリーバイス最古のジーンズで、購入したのは米国のディーラーとのこと。米国で開催されるイベントで販売するための「仕入」が目的です。ちなみにイベントではもっと高値で売れると予想されています。

 

 さて、私の学生時代(90年代)は古着の全盛期ともいえる時代で、街中の至る所に古着屋が軒を連ねていました。

 

 基本的には安いTシャツやポロシャツ、レザーやツイードジャケット等の品ぞろえが大半でしたが、中にはリーバイス等のビンテージ商品(赤耳、BIGE501XXなどの言葉も流行りました)が販売、店頭にディスプレイされており、遠くから憧れの眼差しで見ていたものです。

 

 当時の古着は基本的に自分で「着る」のが目的で購入されていた記憶があります。さすがに1000万などの無茶な価格はありませんが、数万~数十万の商品を頑張って買う知人が何人もいました。

 

 一方、現在では投資や転売目的で古着を購入する人も増えているようです。まあ、古着というより「ビンテージ」といった方がしっくりくるでしょうか。記事で紹介されている店舗では、3040代の男性客が中心で、コレクションとして保管、あるいは投資目的で購入する人が多いとのこと。

 

 古着(ビンテージ)が資産としていつまで通用するのかは不明ですが、今のところ買う人がいるから高値がついています。経済学よろしく、市場の需要と供給の関係性が価格決定の要因になっているわけです。

 

 とはいえ、大半の人にとって単なる古いジーンズに1650万円の価値は見出せません。日常着としてのジーンズであれば数千円で手に入ります。いくら買う人がいるといっても、興味がないものにお金を使うのは、投資というより投機(ギャンブル)でしかないでしょう。

 

 ちなみにアパレル系商品で言えば、スニーカーも似たような市場が形成されています。やはりコレクター(ファン)が多いと希少性は上がりやすい。また最近だと、ポケモンカード(最高取引額43900万)、遊戯王カード(一時期10億円とも)など玩具系も価格が爆上がりしています。

 

 古くは切手なども同様の構造です。ただ、いずれの市場も現在は収集よりも投資、あるいは転売が目的化しています。コレクターアイテムとしてのロマンはほぼなくなり、「THE資本主義」がまかり通っているように感じます。情報も世界中瞬時にいきわたるため、価格の上がり方も半端ありません。

 

 実際の価値に対して価格が不相応に上がりすぎていることを「バブル」と言います。古着や玩具に当てはまるかどうかはわかりませんが、行き過ぎた振り子は必ず戻ってきます。

 

 実際の商売でも、価値に対する適正な価格設定は重要です。人気が出たからとむやみに高値を付けると、後で必ずしっぺ返しが来ます。人気が高まってきた時こそ、誠実な商売を心がけたいものです。

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