
「中小企業買収 悪質買い手企業の情報を仲介業者団体がリストに」2024年9月5日、NHKニュースはこう題した記事を掲載しました。
記事によれば「中小企業の買収をめぐり、一部の買い手企業が、買収先の企業の現金などを引き出したうえ、事業を放置するなどの問題が相次いでいます」とのこと。
経済産業省によれば、国内中小企業のM&A実施件数は増加しており、2022年度の実施件数は事業承継・引継ぎ支援センターを通じたものが1,681件、民間M&A支援機関を通じたものが4,036件とのことです。
ビジネスとしても成長するM&A市場ですが、市場規模が大きくなればなるほど悪質な業者も増えてきます。資金繰りに窮した中小企業を狙って買収し、保証人の切替には応じず、企業の現預金を吸い上げてそのまま消息を絶つ。
残された前経営者は悲惨です。自分が保証人のまま債務はすべて残り、会社の中はめちゃくちゃ。財産はすべて差し押さえられ、途方に暮れるしかありません。
今回のニュースにあるように、悪質な業者が野放しにならないような対策が打たれ始めていますが、まだまだ十分ではありません。結局、自分自身が身を守るしかない。
そもそも、資金繰りが厳しく業績の悪い企業に買い手がつくのは、一部を除いてかなり珍しいと言っていいでしょう。
後継者不足や市場環境の変化、業績の低迷に直面する中、「買い手が見つかれば、経営の苦境から抜け出せるかもしれない」と中小企業の経営者が期待するのは無理もありません。
しかし、現実は想像以上に厳しく、特に苦しい状況下での買収には慎重さが求められます。なぜなら、「そもそもうまい話などない」からです。
M&A市場は急成長しており、適切なパートナーと出会うことで経営を好転させるチャンスが広がっていることも事実です。しかし、市場規模が拡大するにつれ、悪質な業者もまた増加してきています。
業績悪化に苦しんでいたある経営者は、買収提案を受けた際、「この機会を逃せばもう後がない」と焦って契約を結びました。しかし、買収後に資産は次々と売却され、従業員も解雇。事業は放棄され、最終的に会社は倒産しました。経営者は保証人としての責任を免れず、個人財産までも差し押さえられる結果となったのです。
このようなリスクを回避するために、経営者として必要なのは、「冷静な判断力」と「将来を見据えた行動」です。
経営において短期的な解決策に飛びつくのは危険です。特に、経済的に追い詰められている状況では、目の前の利益や誘惑に惑わされがちですが、経営者の仕事はあくまで「将来をつくること」です。
目先の問題に翻弄されるのではなく、長期的な視点で戦略を練り、持続可能な経営を目指すべきです。これは、会社を存続させるためだけでなく、次世代に健全な企業を引き継ぐためにも重要な視点です。
では、具体的にどうすればよいのでしょうか?
まずは、“信頼できる”アドバイザーや専門家の意見を聞くことが第一歩です。M&Aや資金繰りに関しては、専門家の知識と経験が大いに役立ちます。
経営者は孤独になりがちですが、外部の視点を取り入れることで、冷静かつ客観的な判断が可能となります。特に、複数の選択肢を比較検討し、メリットとリスクを見極めた上での意思決定が不可欠です。
次に、自社の価値を再評価することです。業績が悪化しているからといって、全てを手放すのではなく、何が強みであり、どの部分を再構築すれば事業を立て直せるのかを明確にすることが求められます。
事業の根幹を見直し、収益性を改善するための戦略を立て直すことが、将来的なM&Aにおいても有利な条件を引き出す鍵となります。
最後に、「そもそもうまい話などない」という現実を常に意識して行動することです。もしも、極端に有利に思える提案があった場合、それは裏に何かしらのリスクが潜んでいる可能性が高いです。甘い誘惑には惑わされず、健全な経営判断を心がけることが、企業と経営者自身を守る最善の方法です。

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