ニュースの論点No.944 人は数字でウソをつく

「KDDI「広告事業99.7%が架空取引」 子会社「ビッグローブ」などの不正会計問題で 関与は「ジー・プラン」社員2人と結論」2026年4月1日、FNNプライムオンラインはこう題した記事を掲載しました。

エイプリルフールのジョークと見紛うばかりのこのニュース。なんと事業の99.7%が架空取引という前代未聞の不正会計です。

近年、企業規模を問わず不適切会計のニュースが後を絶ちません。ニデックの海外子会社における過大計上や、AI企業であるオルツの売上計上時期の偽装など、業績目標へのプレッシャーが現場を追い詰め、内部統制を崩壊させる事案が頻発しています。

先般発覚したKDDIグループ孫会社における大規模な架空循環取引もその一つです。驚くべきことに現場のわずか2名の社員の手によって、長年にわたり巨額の架空売上が計上され、結果的に約329億円もの現金が社外へ流出していました。

この天文学的な規模の不正も、その発端を辿れば「新規事業の数十万円の赤字を隠すためのちょっとした数字の操作」に過ぎませんでした。

私はこれまで数多くの中小企業の決算書を見てきましたが「自社の決算書は事実のみが記載されている」と胸を張って言い切れる企業は多くありません。経営者の判断を狂わせる「二つの誘惑」が中小企業の現場には常に潜んでいるからです。

一つ目は決算を「良く見せたい」という誘惑です。銀行からの融資を引き出したい、あるいは赤字による信用の失墜を恐れ、翌期分の売上を今期の帳簿に前倒ししたり、実際にはない架空の在庫を計上して見かけの利益を水増しするケースです。

二つ目は決算を「悪く見せたい」という誘惑です。これは主に目先の税金負担を減らしたいという場面で起こります。合法的な節税の範囲を超え、架空の外注費を計上したり、現金の売上を意図的に除外したりするケースが後を絶ちません。

利益を過大に見せる行為と過小に見せる行為は動機こそ真逆ですが、行き着く先は全く同じです。それは「経営状態のブラックボックス化」と「現金の枯渇」です。一度でも事実ではない数字を帳簿に混ぜると、必ず翌年にその辻褄合わせが必要になります。

嘘の数字を隠すためには、さらに大きな嘘をつかなければならなくなります。KDDIグループの孫会社が流出した手数料の穴埋めをするために、雪だるま式に架空の売上を膨張させていった構造と全く同じ、抜け出せない自転車操業に陥ってしまうのです。

利益が出ているように見えて手元に現金がない、あるいは意図的に赤字にしすぎていると、いざという時に銀行が融資をしてくれません。また数字を操作した結果、経営者自身すら会社の本当の状態が分からなくなるのが一番の懸念点です。

決算書とは、会社という飛行機を安全に操縦するため重要な計器そのものと言えます。燃料(現金)が減っているのに計器の針だけいじってまだ飛べると見せかけても、いずれエンジンが止まり確実に墜落の憂き目に遭うことになります。

「正しい決算書」で本当の経営状況がわかれば、会社の未来を考える「正しい材料」になります。ぜひ皆さんも正しい事実をもとに、望む将来をつくっていきましょう。

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