AIの代償

「AIで時短したのになぜ疲れる?脳科学者に聞く「脳疲労」、思考を手放さないAIの使い方」2026年8月18日、Yahoo!JAPANニュースはこう題した記事を掲載しました。

記事では、AIで時短しているはずなのに、以前より疲れを感じる人が増えている。その原因として、情報が多すぎること、そしてAIに対して受け身になっていることの2点が挙げられていました。

たしかにその通りだと思う一方で、これだけでは物足りなさも残りました。情報過多も受け身も、AIが登場する以前からある話です。AI相手だからこそ起きている理由が、ほかにあるはずです。

その感覚は、思い込みではありません。AIを使う人の疲労を調べた研究が、ここ数年でいくつも出てきています。

ある調査では、AIが出した文章の処理と、繰り返しの確認作業とで、多くの人が精神的な負担を感じていると報告されています。出力の量そのものへの疲れと、正確さを繰り返しチェックすることへの疲れは、別の種類の負荷として整理されています。

「確認する」という行為は、内容としては単純です。誤字を直す、数字を照合する、論理の飛躍を見る。どれも難しくありません。ですが心理学には「ヴィジランス課題」という考え方があります。

まれにしか起きない誤りを、長時間見張り続ける作業のことです。レーダー監視員や校正者の仕事がその典型で、個々の判断は簡単でも、警戒を切らさず続けること自体が、脳にとって負荷の高い作業だと分かっています。

もう一つ、見落とされがちな負荷があります。自分で考えて文章を組み立てる機会が、確認作業に置き換わることで失われている、という点です。

心理学の「生成効果」は、自分で作った情報のほうが、読んで判断した情報より記憶や理解に残ることを示しています。直す力と、書く力は別物です。確認ばかりを重ねても、書く力は鍛えられません。

これらに共通しているのは、AIが速くしているのは「作る」部分だけだという点です。そこに「確認する」という、質の違う重さが乗ってくる以上、作業全体の時間が本当に減っているとは限りません。それでも「速くなった」という実感だけは残るため、この負荷の増加は見過ごされやすいのです。

対処法はあります。AIに聞く前に、自分で考え、自分で書く時間を意識してつくることです。ここを手放し続ければ、待っているのは評論家人生です。人の書いたものの当否は判断できても、自分では何も生み出せない。AIに慣れすぎることの本当の代償は、時間ではなく、この作る力のほうです。

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