ニュースの論点No.734 DXは目的ではなく手段

 「なぜ、DXを推進したらクレーム件数が減ったのか ガストやバーミヤンの取り組み」2024322日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。

 

 記事によれば、「大手ファミレスなどを展開するすかいらーくホールディングスが、DXを推進している。その結果、業務が効率化されただけでなく、店舗のクレーム件数減少の効果もあった」としています。

 

 クレームは22年比で23%減少。「セルフレジ」や「下げテーブル表示システム」の導入により、利用客を待たせる時間が短くなったことが要因です。「待つ」という顧客のストレスが軽減されたことでクレーム減につながっています。

 

 そもそもクレームはなぜ起こるのか。一言でいえば「期待値とのズレ」です。「接客態度が悪い」「呼んでも来ない」「メニューの写真と違う」「出てくるのが遅い」「店舗が汚い」など、自分が期待していたこととのズレが大きければ大きいほど、不満はたまりクレームにつながりやすくなります。

 

 今回のすかいらーくの件では、DXによりムダな待ち時間が抑えられ、「期待値のズレ」がある程度解消された結果が出ていると思われます。期待値自体が低くなっているのかもしれません。

 

 一方で、多くのクレームは「人」に対して発せられます。つまり「人」が介さなくなるだけで表面的なクレームは減る。もちろん、SNSMAPアプリなどではクレームがアップされるかもしれませんが、企業が現場で直接把握できるクレームの絶対数は減るでしょう。

 

 今回はDXにより顧客満足度が上がり、その結果クレームが減った一面はあります。しかしその裏側では「新たな不満」が見えないながら発生しているかもしれません。便利にはなったものの、目に見えない不満が積み重なり、どこかで爆発する恐れはあります。

 

 最近、ウェブ上のサービスでは特にそうですが、人間同士の直接的なコミュニケーションができないことが増えました。効率は上がりましたが、イレギュラー対応には時間がかかる(もしくは対応できない)ようになり、不具合発生時の対応は遅い。サービスに納得がいかず解約しようと思っても対応は電話のみでつながらない‥。

 

 翻って、そもそも不満を感じても実際にクレームを言ってくる人は1割に満たないというデータもあります。クレームを言う代わりにだまって来なくなる。この点、悪質なクレーマーを除いて、正当なクレームは企業にとってありがたく有益な情報です。

 

 比較的安価な飲食チェーンでは無人化や機械化対応で効率的な運営を追求するのが一つの解です。一方、「人によるクオリティの高いサービス」を志向する店舗で同じことをやっても逆効果になります。

 

 自社はどこを目指し、何を目的に経営しているのか。最低限のDXは必要かもしれませんが、過ぎたるは猶及ばざるが如し。DXは単なる手段であり、目的ではありません。本当に自社にとって必要なことなのか。改めてビジョンやミッションを見直してみましょう。

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