コラムNo.783 付加価値が負荷価値になる時

 あるパン屋での話。いくつかのパンをかごに入れ、レジで会計を済ませます。すると、スタッフの方から「くじ」を引くよう勧められます。どうやら今日は店舗のイベントらしく、購入した特典でくじが引けるようです。

 

 で、くじの結果は…はずれ。「あー残念。。」という雰囲気の中、購入したパンを持って帰ります。結局何が当たるのかよくわからないまま店舗を後に。

 

 さて、皆さんも店舗で買い物などした際、くじや福引などを引いた経験があると思います。今回の件も日常によくある風景の一つです。

 

 ただ、今回のような例ではお客側に少しばかりの良くない印象を残すかもしれません。気にしない人はまったく気にならない反面、一定数の人には心に引っかかる感じが残る。

 

 この日は買い物をしてただ帰るという淡々とした日常でしたが、思いもよらぬ「くじ」で急に特別感が表れます。まあ、結局は「はずれ」で特に何もなく帰るわけですが。

 

 何か当たるかもしれないという期待感を持たされ、はずれを引くことで少し残念な気持ちになる。こちらは特に何も損はしていないはずですが、くじにはずれることで何か損を被った気持ちになってしまう。

 

 かなり細かい話ですが、人間心理を考えると非常に重要な論点です。人は損失を過剰に評価します。同じ金額を得る喜びよりも、失う苦痛の方が倍以上大きく感じる。これはノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンが著したプロスペクト理論で明らかにされています。

 

 今回はくじで何が当たるのかわかりませんでしたが、一方的に与えられた期待値が「はずれ」を引くことで失われてしまった。苦痛とまではいかなくても、心に何だかもやもやしたものを残してしまう。

 

 ただ買い物をして帰るだけだったのに、くじを引くことで感じなくてもよかった負の感情が引き起こされ、場合によっては店に対しての印象までマイナスになってしまう。

 

 取るに足らないことのように思うかもしれませんが、この日々の小さな積み重ねが人間の判断に影響します。店舗側は良かれと思ってイベントを実施するわけですが、それが逆効果になることもありえるのです。

 

 付加価値を提供しているつもりが、“負荷”価値となりお客に重荷を背負わせてしまう。これは今回のくじに限らず、見直した方がいいサービスは世の中に少なくありません。

 

 今回の件では、イベント自体をもっと周知したうえで、くじを引くのを任意にする、はずれをなくして参加賞を用意する、くじではなくノベルティグッズにするなどの対策を講じた方がいいでしょう。

 

 わざわざ手間暇をかけて損失を感じさせられるのは誰にとっても不本意です。店に対する印象まで悪くなってしまう。同じようなことが続くと自然とリピートしなくなります。

 

 経営者の皆さん。知らず知らずのうちに「負荷価値」を提供していないでしょうか。そのサービスがお客を遠ざけているかもしれません。今一度自社のサービスを見直してみてください。

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