
「ハローワークのネットサービスにAI活用 厚労省が実証実験」2025年4月22日、NHKニュースはこう題した記事を掲載しました。
ハローワークにおいて、求人の検索や申込み、問い合わせ対応にAIを活用することで、業務効率化を図るという試みです。
現在、ハローワークのネットサービスは月に7,000万件のアクセスがあり、企業の求人情報の8割はこの仕組みを通じて申し込まれているとのこと。利便性を高めるためにAIを導入するのは当然の流れかもしれません。
この点、AIは「探す」には強い一方で、「出会う」には向いていないと考えられます。
仕事を探す人が本当に求めているのは、検索性の高さではなく、“自分に合う職場”と出会えることです。
給与や勤務時間といった条件面も大切ですが、それだけでは「働く意味」までは見えてきません。
私たちが職場を選ぶとき、そこには必ず“理由”があります。
たとえば「家族の介護と両立できる範囲で働きたい」「自分の得意を活かせる場所で働きたい」「地域の役に立つ仕事がしたい」など、背景には人生の物語があります。
こうした背景や価値観のことを、ビジネスの世界では「ナラティブ(物語)」と呼びます。
ナラティブとは、履歴書に書かれていない、けれどとても大事な情報です。
残念ながら、現在のAIにはこのナラティブを読み取る力はありません。AIは「点の情報」、つまり年齢・資格・職歴といった構造化されたデータを処理するのは得意ですが、「なぜそうなったのか」「その人は何を大切にしているのか」という“線”や“面”の情報には、まだうまく対応できません。
では、人間の職員ならそれができるのか?
もちろん、できる人もいます。しかし現実には、どの現場にも「聞いているようで聞いていない」「対応が事務的すぎる」など、対話力や共感力に課題のある職員が一定数いるのも事実です。
だからこそ今、必要なのはAIと人間の“役割の見直し”です。
AIは、求人票の形式チェックやよくある問い合わせへの対応、面談メモの要約など、繰り返しの多い業務を担う。
人間はそのぶん、求職者や企業の“背景”や“思い”に向き合う時間を確保するべきです。
「どうして今、仕事を探しているのか?」
「どんな働き方が、その人にとって意味があるのか?」
「この人がこの企業で働く“物語”はどんな形をしているのか?」
こうした問いは、やはり人にしかできません。
経営者として私たちが考えるべきは、こうした時代において「求人情報の出し方」をどう変えていくか、ということです。
仕事内容や条件だけでは、AIのフィルターで埋もれてしまいます。
それよりも、「どんな想いでこの仕事をつくったのか」「どんな人と一緒に働きたいのか」といった“ストーリー”が、これからの採用には必要です。
AIは手段です。目的は、仕事を通して人と人が“意味のある出会い”を果たすこと。
その出会いをつくれるのは、やはり人間なのです。

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