ニュースの論点No.958 広げずに絞り込め

「客30人を出禁にして「年商2倍」に。飲食店が“迷惑客”を切り捨てたら優良客が戻ってきた納得の理由」2026年5月18日、Yahoo!JAPANニュースはこう題した記事を掲載しました。

一見すると、客を自ら手放すことは売上減少に直結するように思えますが、実はここにビジネスの重要な本質が隠されています。

売上を伸ばそうとするとき、私たちはつい「サービス内容」を増やし、「ターゲット客層」を広げ、さらには「営業エリア」まで拡大しようとしがちです。しかし、結論から言えば、何でもかんでも広げようとするのは決して得策ではありません。

■ むやみな拡大路線の行き着く先は「倒産」

サービス、客層、エリア。これらをむやみに広げ過ぎた結果、行き着く最悪の結末は「倒産」です。

大企業であれば、豊富な資金力と人材を武器に、あらゆる層へ向けた全方位型のビジネスを展開できます。しかし、経営資源(ヒト・モノ・カネ)が限られている中小零細企業が同じ戦い方をすればどうなるでしょうか。

限られた資源を分散させることで、一つひとつのサービスや商品にかける質は必ず低下します。特徴のない凡庸なサービスになれば、待ち受けているのは過酷な「価格競争」です。利益率が圧迫されるだけでなく、自社に合わない顧客の無理な要求にまで対応することで現場は疲弊し、致命的なリソース不足に陥り、最終的には資金繰りがショートして会社が潰れてしまいます。

■ うまくいかない時ほど「広げてしまう」罠

そもそも、なぜ多くの中小零細企業が身の丈に合わない拡大路線に走ってしまうのでしょうか。

その答えはシンプルです。現状の経営がうまくいっていないからです。「今のままでは売上が立たない」という焦りから、安易に客層を広げたり、新しいサービスに手を出したりしてしまいます。

しかし、足元の経営がうまくいっていない状態で風呂敷を広げても、傷口が広がるだけです。

本来見直すべきは、規模の拡大ではありません。提供している商品やサービス、立地、接客の質、そして何より「誰に売りたいのか」というターゲット設定そのものに拙さがある限り、どこまで手広くやろうともムダに終わります。

重要なのは、広げることではなく「絞ること」です。

限られた経営資源しかない中小零細企業が生き残るための唯一の戦略は、自社の強みを本当に必要としてくれる「ニッチな層」を見極め、そこにすべての資源を集中させることなのです。

■ 厳しい時こそ「正確な現状把握」を

いま経営者に求められているのは、現状を打破するための「魔法の杖(新たなサービスや客層)」を闇雲に探しに行くことではありません。まずは自社の足元を直視し、「自身の現状把握を正確におこなうこと」です。

自社の何が強みで、何が拙いのか。どの顧客が本当に自社の価値を理解してくれているのか。業績が厳しいからといって、わけもわからず新たなことに手を出すのは絶対に避けるべきです。それは生存確率を下げるだけのギャンブルに過ぎません。

冒頭の飲食店の事例が教えてくれるのは、「捨てる勇気」と「絞り込む覚悟」です。

広げるのではなく、絞り込む。厳しい時こそ新しいことには手を出さず、自社が勝てるニッチな領域を見極めて深く掘り下げる。それこそが、経営資源の限られた中小零細企業が生き残るための、最も確実で強い戦略です。

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