コラムNo.271 業務委託契約の落とし穴

 リアル店舗を持つアパレル・美容・飲食業などでは、多店舗展開の方法として、主に自社直営やフランチャイズなどが選ばれます。あるいは、のれん分けで既存店を譲り、自身は新たな店舗を開業する場合もあるでしょう。

 

 それらに加え、「業務委託契約」で店舗を広げる場合も多く見受けられます。店舗ビジネスでの業務委託契約は、基本的に店舗などの資産は本部が所有し、店舗運営のみを受託者に任せる形態が大半です。

 

 業務委託手数料はどうなっているのでしょうか。例えば、美容師の場合は一般的に売上の4050%が受託者に支払われます。飲食店であれば、店舗丸ごとを委託する場合、FLコスト(食材費と人件費)分で売上の60%が手数料という例もあります(スタッフ個別と契約する場合もあります)。アパレル店だと、売上の1020%が手数料となります。

 

 業務委託契約のメリットは、委託者にとっては人件費(保険等含む)を固定費から変動費化し、雇用リスクを抑えられること、受託者にとっては売上に応じた高い報酬と、勤務時間や休日が自由になること等が挙げられます。

 

 しかしながら、契約は業務委託でも、その実態は雇用状態である場合が少なくありません。人件費を抑制したいがために、従業員待遇のまま業務委託契約を結んでしまうと、「偽装請負」となる可能性があります。もし雇用契約だと判断されれば、労働法が適用され、残業代等の支払い義務が生じる恐れがあります。

 

 ちなみに、「労働者であるといえる」ことを「労働者性」と呼び、いくつかの基準で判断されます。代表的なものを挙げると、

・業務の指揮命令の有無

・場所、時間の拘束の有無

・欠勤控除の有無

・報酬額が同様の従業員より高いか否か

等が挙げられます。他にもありますが、これらを総合的に見て労働者性が判断されます。この点、自社内で独自に業務委託を結んでいる場合は、高い確率で労働者と判断される可能性があります。

 

 業務委託契約を仕組みとしてうまく機能させるには、委託者・受託者の双方がウィンウィンの関係になれるかがカギとなります。ところが、立場の強い委託者が、受託者にとって相当不利な契約内容にすることが多分に見受けられます。また、誰から見ても受託者の労働者性が高い状態の店舗も少なくありません。

 

 コンプライアンス面でも問題があるのは当然として、従業員から搾取するようなやり方は、モラル面の問題としても多くの関係者を傷つけることになります。そのままでは委託者側の信用どころか、ビジネス自体の持続可能性が棄損されます。

 

 経営者の皆さん。会社を経営する上で、「知らなかった」では済まされない問題はいたるところにあります。積極的に知識のアップデートをするとともに、自社の都合だけではなく、関係者全員がプラスになるような発想を持って経営にあたりましょう。

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