
いきなりでちょっとわかりづらいかもしれませんが、「“であること”と“すること”」には相当な違いがあります。例えば、私はアパレル小売店の経営者ですが、「経営者であること」と「経営すること」はまったくの別物です。
同様に、中小企業診断士として登録していますが「中小企業診断士であること」と「中小企業の経営支援を行うこと」はまったく違います。
丸山真男が書いた評論文「であることとすること」によれば、徳川時代、出生や家柄など“何であるか”が決定的な価値基準の役割を担っており、何を“する”かに重きは置かれなかった(身分によってふるまいが限定される)。要は何でも好きなことができるわけではない。
近代においては肩書や立場、あるいは身分など、“であること”から“すること”に価値が移行していると説きます。要するに「静」から「動」への転換です。
現代は「する」ことに価値が移行しています。少し解釈を広げれば、社長だから偉いのではなく、社長としての成果を残すからこそ、ステークホルダーから一目置かれ、敬われる立場になれる。中小企業診断士だから先生になるのではなく、現場で実績の支援を積み重ねたからこそ診断士としての本当の価値が評価される。
とは言え、「であること」の影響力がなくなったわけではありません。むしろ一部では「であること」の重さがいびつな形で残っており、影響力が上がっていることもあります(政治家がわかりやすい例ですね)。
さて、私は中小企業診断士として、さまざまな士業の方と仕事をさせていただいていますが、「私は○○士(偉い先生)である」タイプの人が想像以上に多いと感じます(態度や行間で)。同様に「私は偉い社長である」人も結構多い。「だからオレの言うことは正しい」と上から目線で言う人たちは大体そうです。ちなみに、名刺にズラッと肩書が並んでいると危険度MAXですね。
常に肩書や立場に執着し、決められたこと(自分が決めたこと)の中でしか動かない。そしてそのポジションに居座る。まさに「であること」に価値があるとしてふるまいます。こんな人たちはそこから一歩も動かないので、当然ながら成長しづらくなります。
「エネルギー保存の法則」では、ボールをある高さに持ち上げると位置エネルギーを得、ボールが落下するにしたがい、運動エネルギーが大きくなります。上に投げると最初は運動エネルギーが大きく、徐々に位置エネルギーに変わります。
つまり、「であること」に価値を置く人は、その立場を守るために相当な位置エネルギーを使っているのです。「すること」によって運動エネルギーを使わなければ何も変わりません。成長は言わずもがなです。
経営者の皆さん。「であること(つまり既得権益)」に執着すると、限りある経営資源を位置エネルギーとしてムダに使ってしまいます。そのエネルギーはぜひ「すること(挑戦)」に変え、リーダーとして会社を先導していきましょう。

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