コラムNo.831 自分にしかできないことは弱みになる

先日、近所で行われている季節の風物詩的イベントに行ってきました。毎年この時期、1カ月ほど開催されるイベントで、県内外から多くのお客様が来場されています。

 

私が来場したのは祝日で、お客様の数も多く非常ににぎわっていました。出店している会社には以前のご支援先もあり、ちょっと覗いてみようと前を通りかかると、ちょうど社長自ら接客をされているタイミング。

 

関与先は2社あったのですが、2社とも社長が店頭に立ち、自ら接客をされている状況でしたので、「おお‥!」と驚きと嬉しさが相まった感情が湧き上がってきました。

 

ちなみに2社とも小さくはない規模で、社名を知っている方も多い会社です。接客も慣れた感じだったので、人手不足で仕方がなくというよりは、率先して現場に出ていらっしゃるのでしょう。

 

社長が現場の肌感覚を持つことは非常に重要です。もっとも、あまりに出張りすぎていると社員が委縮してしまう恐れがありますが、現場の第一線で社長自らがお客様の声を聞くことは会社にとって大いにプラスになります。

 

特に、ある程度の規模になれば社長が現場に出る時間がほぼ取れなくなり、経営判断に必要な現状認識のズレが生じてきます。この点で、定期的な現場体験は社長にとって必要不可欠なことだと考えています。

 

翻って、創業期は社長自らすべての業務を行うのが当然です。すべての売上をつくり、膨大な事務処理も自ら行うのが創業期の社長の仕事です。

 

とは言え、この状態が長く続くと弊害が生じます。売上は伸び悩み、事務手続きは滞り、資金繰りは厳しくなり、自分が何をしているのかわからない状態になる。

 

人を採用して任せようとしても、育成にあてる時間もないからほったらかし、さらには売り方も事務処理も複雑怪奇な「自分ルール」があるので結局なにも任せられない。

 

ご支援先で同じ状況の会社を山ほど見てきました。「自分しかできない」ことを誇りに思っている社長も少なくなく、最近久しぶりに会った知人も「私のやり方は教えることができない」と、事業規模を縮小し、ほぼ自分一人の売上で数名の社員を賄っています。

 

規模の大小に良し悪しはありませんが、「家業」から「企業」に成長させるには、「人に任せること」は避けることのできない課題となります。

 

そして人に任せるには形になっている必要があり、つまるところ再現性を持った「マニュアル化」が必須事項となる。

 

「マニュアル化すると機械的なサービスになるし、社員がロボットのような働き方になるのでつくらない」という声もよく聞きますが、これは単に「面倒くさいから」の言い訳に過ぎません。

 

マニュアルの解像度は会社の状況に応じて変化しますが、人に「教えて」、「任せる」には、マニュアル化は絶対的に必要です。少なくとも会社が求める最低限の仕事のレベルが明記されている必要があります。

 

社長が現場に出るのは、お客様の声を聞くことと共に、社員の練度を確認するためでもあります。マニュアルがあっても、それが浸透するかどうかは現場の「人」次第です。人に影響を与えるのは「社長」です。

 

経営者の皆さん。「自分しかできない」のは強みではありますが、後々は必ず弱みになっていきます。まずはメモ書きでもいいので、「自分の仕事」を言葉にして外に出していきましょう。自分自身の気づきにもつながります。

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