コラムNo.883 強みは見えない 

事業計画の策定支援をする際、経営者の皆さんに「御社の強みは何ですか」と尋ねると、しばしば言葉に詰まってしまう姿を目にします。

 

「特別な技術はない」「他社と同じことをしているだけ」とおっしゃる方も少なくありません。実際、多くの経営者が自社の強みを「誇れる特別なもの」と考えてしまい、なかなか見つけられないのです。

 

しかし強みとは、必ずしも派手で分かりやすいものばかりではありません。むしろ成果の土台になっているのは、日々の中に隠れた「当たり前の積み重ね」です。これを私は「隠れた強み」としています。

 

強みには大きく二つの側面があります。一つは商品やサービスの品質、立地条件や店舗規模、最新の設備や技術といった、誰の目にも分かりやすい「表面的強み」です。これは比較されやすく、模倣されやすい特徴を持っています。

 

もう一つは、普段は目立たないけれども成果を支える「隠れた強み」です。例えば、従業員の細やかな対応力、チームワークや社内の暗黙知、長年築いてきた顧客との信頼関係、地域社会とのつながりなどがそれにあたります。これらは数値に表れにくく、経営者自身も気づきにくいものですが、実は競争力の源泉であり、模倣困難な価値を持っています。

 

ある飲食店の例。経営者は毎日2時間以上をかけて市場へ買い付けに行っていました。本人にとっては「当然のこと」であり、特別な強みだとは思っていませんでした。しかしその日々の努力が「いつも新鮮で安心できる料理」を生み出し、顧客の満足度を高め、長年の信頼につながっていたのです。

 

このような長年の習慣や積み重ねは、他店が簡単に真似できるものではありません。まさに「隠れた強み」が成果の土台となっていた事例です。

 

別の例では、老舗の工務店が挙げられます。最先端の設備はなくても、職人が地域の住宅を何十年も守り続けてきたという信頼が、何よりの強みとなっています。顧客にとっては「安心して任せられる」という価値があり、その積み重ねが新しい受注につながっています。ここでもやはり、派手ではないけれど確かな「隠れた強み」が成果を支えているのです。

 

事業計画を立てる際、強みを言語化できるかどうかで説得力は大きく変わります。銀行や支援機関にとっても、強みが「設備の更新」や「立地の良さ」だけでは不十分です。その裏にある「隠れた強み」が示されてこそ、計画の実現可能性や持続性が伝わります。

 

大切なことは、「自分では当たり前だと思っていること」に光を当てる視点です。納期を必ず守ること、クレームを出さないこと、社員同士が助け合う文化を持っていること。これらは外から見れば立派な強みです。ただし、経営者一人では気づけないことも多いので、社員や第三者の意見を取り入れると効果的です。

 

私自身のミッションは「隠れた強みの価値を最大化する」ことにあります。経営者の皆さんが自社の当たり前を強みとして認識し、それを計画や戦略に活かすことで、会社の可能性は大きく広がります。隠れた強みを見つけ、言葉にし、価値として磨き上げていく。そのお手伝いをすることが、私の役割であり使命です。

 

強みとは特別な資源や派手な実績だけではありません。むしろ地道に積み重ねてきた「隠れた強み」こそが、成果を生む真の源泉です。事業計画をつくる際には、自社の当たり前をもう一度見直してみてください。未来を支える力が眠っています。

 

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