
生成AIが登場して約三年。当初は誤情報の多さや精度の低さが課題でしたが、いまでは実務でも十分に使える水準になりました。情報を集め、整理し、要約し、分析する。AIは経営者の思考を支える優れた道具となりつつあります。
だからといってAIに頼り切ると、逆に思考が浅くなる。AIを活用するうえで最も大事なのは、まず自分の頭で考えることです。自分の中に問いがなければ、AIの答えはただの借り物になります。
事業計画策定の出発点は、自分自身の「想い」です。なぜこの事業を始めたのか。誰を喜ばせたいのか。どんな未来を実現したいのか。その原点を言葉にできたとき、初めてそれは判断基準になります。AIが示す多くの選択肢の中から、何を採り、何を捨てるかを決める軸になるのです。
逆に想いが曖昧なままでは、AIに引っ張られ、計画は形だけのものになります。AIは“他人の知恵”を集約してくれますが、“自分の意思”までは代弁できない。だから最初に考えるのは自分でなければならない。
ビジョンやミッションに正しい答えなどありません。AIはもっともらしい言葉を整えるのが得意ですが、そこに経営者自身の納得がなければ、どれほど整った文章でも心に響きません。
経営者が腹の底から「これだ」と思える言葉でなければ、社員も顧客も動かせないのです。“正しい答え”を探す人はAIに飲み込まれ、“問いを深める人”がAIを使いこなす。この姿勢が、AI時代の事業計画づくりの核心だと思います。
とはいえ、自分の頭で考えることにも限界があります。人間の思考には必ず偏りがある。だからこそ、経験や学習が欠かせません。AIもまた間違えます。だからこそ、AIに考えさせるのではなく、AIを確かめる。誤りを見抜く力が、AIを使いこなす前提になります。
一方で、AIを使う中で初めて気づくこともあります。AIとの対話は、自分の無知を可視化するプロセスでもあります。
AIの活用範囲は広いですが、使い方は領域によってまったく異なります。想いを言葉にするときのAIは、問いを投げかけてくれる壁打ちの相手です。一方、市場や顧客を分析するときのAIは、情報を整理し仮説を検証するための分析者です。
AIの特性を理解し、どの段階で何を任せるかを見極めることが重要です。AIで整え、人が決める。その順番を間違えなければ、AIは経営者の思考を拡張し、事業計画に深みを与えてくれる。
AIは他人の知恵の集合体であり、人間は自分の意思の源泉です。両者がぶつかり、補い合うことで、思考は磨かれていきます。AIで整い、人が決める。この関係を正しく保てる経営者こそ、AIを最も味方につけられる人だと思います。
最近では、こうした考え方を実際の事業計画づくりに生かす場も増えてきました。私自身も、経営者が自分の想いをAIとともに整理し、形にしていく取り組みを続けています。

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