コラムNo.921 正しさより面白さ

「正しいと思うことではなく、面白いと思うプランを選ぶようにしていました」

 

著述家の山口周さんがXで紹介されていたこの言葉。全日空の井上社長が対談の際に言われた言葉だそうです。

 

「正しさ」より「面白さ」を選んだほうが、後悔が少なく、結果としてうまくいくことが多い。

 

これは勢い任せの推奨ではなく、むしろ、経営の現実に即した意思決定の作法だと感じます。経営はやってみないと分からないことだらけです。正しさを積み上げても前提が外れれば簡単に崩れます。

 

それでも私たちは「正しい」を求めがちです。理論、理屈で固めたくなる。日本人は特に正解を見つける教育を受けてきた分、無意識にそうなりやすいのだと思います。

 

ただ、正しさには副作用があります。正しい答えは普遍化しやすい。条件が似ていれば結論も似ます。つまり、意思決定が平均化する。平均化した結論はだいたい無難です。そして無難な計画は温度が上がりません。温度が上がらなければ人は動かない。人は正論で動かず、感情で動くからです。

 

社長が「わくわく」していない未来に、組織のエネルギーが生まれるはずがありません。

 

だから私は起点として「心の声」を重く扱います。「わくわく」は最初はエゴです。きれいな理念ではありません。「こうしたい」「やってみたい」という衝動。しかし、火はそこからしか起きません。火がない限り行動も学習も生まれない。

 

私自身は左脳が強いタイプです。ビジョンを考えるほど、筋道を立て過ぎて、自分が面白くない未来を描く癖がありました。整っている。説明できる。けれど温度がない。これでは人は動きません。

 

今回、年末年始に体調を崩して、強制的に頭が止まりました。そこで、あえて準備をせずにビジョンに着手したところ、心の声が先に出ました。「わくわく」を起点にすると、言葉が前に進み、その後のアイデアも比較的スムーズに出てくる。頭の中のノイズが落ちると、心の声は聞こえるのだと実感しました。

 

逆に、感情が先走るタイプは筋道を立てるのが苦手なこともあります。人にはそれぞれ偏りがある。結論は二者択一ではありません。順番の話です。まず心の声で火をつける。その後にロジックで整える。逆に最初から正しさで固めるほど、心の声は消え、皆と同じ結論に寄り、温度が下がり、結局動かなくなります。

 

経営は正解を当てる競技ではありません。動いて、学んで、整えていく営みです。その最初の一歩を生むのは、正しさではなく「面白い」と感じる心の声。私はこの言葉を、単なる感情論ではなく、経営の本質だと受け止めています。

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