
正月明けに急増 “あけおめ退職” 退職代行サービスの依頼は「約3〜5倍」 背景には「節目の年始・冬のボーナス支給後で金銭的な余裕が…」2026年1月7日、Yahoo!JAPANニュースはこう題した記事を掲載しました。
正月休み明けに退職者が増える、いわゆる「あけおめ退職」が話題になっています。報道によれば、退職代行サービスへの依頼は通常の3〜5倍に増え、1日で数十件にのぼる日もあるとのことです。
背景には、年末年始という節目で気持ちを整理しやすいこと、冬のボーナス支給後で一時的に金銭的な余裕が生まれること、家族や友人と仕事について話す機会が増えることなどが挙げられています。調査では、正社員の約3人に1人が年末年始に「辞めたい」と感じた経験があるともされています。
こういうニュースに触れると、「最近の若者は我慢が足りない」「退職代行に頼るのは無責任だ」といった声が出がちです。
しかし、現象を冷静に見れば、年末年始は単に退職を実行しやすい条件が重なっているだけとも言えます。長期休暇で仕事から距離を置けること、ボーナス後で当面の生活不安が和らぐこと、年始という区切りが決断を後押しすること。これは感情論ではなく、環境として合理的です。退職そのものは、悪いことでも異常なことでもありません。
問題は、辞めること自体ではありません。なぜ「辞める」という結論しか残らなかったのか、そこに目を向ける必要があります。多くの場合、辞めたい気持ちは正月に突然生まれるわけではありません。
日常の中で感じていた小さな違和感や不満が、忙しさの中では見過ごされ、長期休暇という「考える余白」ができたときに、初めて言葉になります。そして、その思いを家族や友人に話すことで整理され、決断へと変わっていきます。
職場の中に立ち止まって考える余地や、安心して相談できる相手がいなければ、考える場と相談の場は社外に移ります。社内では本音を語れず、社外で結論だけが固まる。その結果、会社側から見ると退職はいつも「突然」に見えるのです。
よく「いい人は、いい会社に流れる」と言われますが、ここでいう「いい人」や「いい会社」に共通の正解はありません。成長を重視する人もいれば、安定を大切にする人もいます。裁量を求める人もいれば、役割の明確さを重んじる人もいる。同じ会社であっても、「ここは自分に合っている」と感じる人と、「合わない」と感じる人がいるのは自然なことです。
だからこそ経営者に求められているのは、全員にとっていい会社を目指すことではありません。自社は、誰にとってのいい会社でありたいのか。何を大切にし、何は約束しないのか。どんな働き方が合い、どんな人には合わないのか。それを経営者自身の言葉で言語化できているかどうかです。
いい会社が言語化されていない職場では、社員は自分の基準で判断するしかありません。その結果、考える余白が社外で生まれ、相談も社外で行われ、結論だけが社内に持ち込まれます。退職が突然に見えるのはそのためです。
退職は悪いことではありません。しかし、辞めるしか選べない状態が続いているとしたら、それは経営の問題です。いい会社の輪郭が言葉として共有されていれば、合う人は踏みとどまり、合わない人は早めに違和感に気づきます。退職は突然ではなく、予兆として現れるはずです。
あけおめ退職という現象は、人が辞めやすくなった時代の象徴ではなく、会社のあり方が問われている「サイン」です。

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