中小企業の経営者の方とお話ししていると、「コンサルアレルギー」や「コンサル不信」を口にされる方に、結構な確率でお会いします。
先日も新しくご支援に入った先で、以前に関わっていたコンサルタントへのダメ出しをかなりの時間をかけてお聞きする機会がありました。その企業には、過去に別々のタイミングで2人の専門家が入っていたそうです。
1人目は、そもそもこちらの話を聞こうとせず、自社のビジネスモデルすら理解しようとしない年配の士業。そして2人目は、ある機関を通じて知り合った業界経験者でしたが、こちらも自社の社外秘のような情報を吸い上げるばかりで、具体的な提案は何もなし。後から業界内での評判を調べてみると、ちょっと難のある人物だったことが分かったそうです。
いずれのケースも共通しているのは、「目の前の企業の現状を深く把握しようとせず、自分自身がやりたいことや、自分の得意な型を押し付けているだけ」という点でした。そこには顧客目線など微塵もなく、あるのは自分目線だけです。
■経営者が「実は……」と口を開くときの複雑な胸中
こういった過去の苦い経験を、経営者の方が最初からオープンに話してくだされば、まだ良いほうです。実際には過去の不信感から心を閉ざし、最初は何も言わない経営者の方のほうが圧倒的に多いのが現実です。
私自身、複数回の訪問を重ね、人間関係が少しずつ築かれて初めて、「実は、以前入ったコンサルが最悪で……」と、複雑な胸中を吐露される場面に何度も立ち会ってきました。
経営者の方々は、決して最初からコンサルタントを嫌っているわけではありません。会社を良くしたい、現状を打破したいという純粋な思いでお金を払い、時間を割いて専門家を招き入れているはずです。それにもかかわらず、裏切られ、傷つき、結果として「コンサルアレルギー」という自己防衛の殻に閉じこもらざるを得なくなってしまっているのです。
■「やり方」を教えるだけの仕事は、ネットやAIで済む時代
そもそも、コンサルタントという仕事は「実業」か「虚業」かで言えば、間違いなく「虚業」です。
私たちは、大地の恵みから作物を育てるわけではありません。工場で新しいモノづくりをするわけでも、大工さんのように形ある建物を建てるわけでもありません。クリエイターのように美しいデザインを生み出すわけでもなければ、どこからかモノを仕入れて、付加価値をつけて流通させるわけでもありません。
誤解を恐れずに言えば、事業者に対して知識やノウハウを提供して問題解決を図るという仕事は、「あってもなくても世界は回る」ような仕事。まさに虚業そのものです。
さらに言えば、今の時代、単なる「知識」や「ノウハウ」、つまり「やり方」をインプットするだけなら、ネット検索をすればいくらでも無料で転がっています。それどころか、AIに問いかければ、一瞬でそれらしい正論やきれいな答えが返ってくる時代です。
どこかの教科書から持ってきたような「やり方」をそのまま横流ししてインプットするだけの専門家なら、もはや存在価値はありません。AIで完全に代替可能です。
■検索やAIには絶対に変えられない「本音」のコミュニケーション
モノを持たない、形のない「虚業」だからこそ、私たちコンサルタントは、人としてのコミュニケーションを極限まで大事にしなければなりません。
では、検索やAIには絶対に真似できない、経営者にとっての「本当に価値あるコミュニケーション」とは何か。
その基準は非常にシンプルです。
「そのコンサルタントの前で、自分が自然と本音を話せたかどうか」 なんなら、「これまでの人生で、身内や社員にすらここまで話したことはない、と思えたかどうか」
これに尽きます。
経営者は常に孤独です。数字のプレッシャー、社員への責任、将来への不安。それらをすべて一人で抱え込んでいます。だからこそ、表面的な「やり方」の提示ではなく、自分のドロドロとした本音や、本当に悩んでいる核心部分を安心して吐き出せる相手が必要なのです。
そこまでの深い人間的信頼関係を築けて初めて、コンサルタントはスタートラインに立つことができます。
■虚業が形にできる唯一の成果、それは「行動の後押し」
そして、人間的信頼(本音)の先にあるのが、能力的信頼、つまり「成果」です。
モノを作らない私たちが、世の中に形として残せる「成果」とは一体何でしょうか。きれいに製本された分厚い提案書を提出することでしょうか。それとも、誰も実行できないような立派な経営戦略を語ることでしょうか。
どれも違います。私たちが形にできる唯一の、そして最大の成果とは、「人の行動を促すこと、行動の後押しをすること」に他なりません。
どれほど優れた戦略であっても、経営者や社員の皆さんが「動かなければ」現実は1ミリも変わりません。経営者が本音を吐き出し、胸のつかえを降ろし、覚悟を決めて、次の一歩を踏み出すためのエネルギーに変わる。そして、実際に会社が動き出す。この「行動」のきっかけを作ることこそが、虚業であるコンサルタントが世の中に提供できる真の価値なのです。
■おわりに:自戒の念を込めて
もし、経営者の本音を引き出すコミュニケーションもできず、実際の行動を変えるような成果も出せないのだとしたら、そのコンサルティングは完全に「不要不急のサービス」です。
人間的信頼もない、能力的信頼もない。そんな状態では、世の中にコンサルアレルギーや不信感を抱く経営者を増やしてしまうだけで、社会に対して何のプラスも生み出しません。
私自身、このコラムを書きながら、強い自戒の念を込めて自分自身を振り返っています。
自分自身の関わり方が、独りよがりの「自分目線」になっていないか。知識の横流しに終始していないか。目の前の経営者の方が、本当に本音を話せているか。そして、何より行動を後押しできているか。
これからも、ただの「虚業」で終わってしまわないよう、経営者の皆様のため、現実を動かす本当の価値を提供し続けていく覚悟です。

