コラムNo.967 レスポンス速度で丸見えになるもの

「即レス」という言葉。今ではすっかり手あかにまみれ、「仕事では早く返信しましょう」という処世術になってしまった感があります。

しかし、即レスの本質は速さではありません。相手の時間をどれだけ大切に考えているか。相手の時間という、その人の人生そのものを尊重する。その価値観が表に出ているのです。

大切だと思うものには、自然と意識が向きます。反対に、自分にとって優先度が低ければ、悪気がなくても後回しになる。つまり、レスポンス速度には、その人が口では語らない優先順位が現れます。

大切な人に万が一のことがあれば、私たちは目の前の予定を中断してでも応答します。そのとき「即レスしたほうがよいか」などとは考えません。返す以外の選択肢が、最初から存在しないからです。

もちろん、緊急事態と日常の仕事を同列には扱えません。しかし、両者は完全に別のものでもない。反応の強さは違っても、その底には「相手の時間や状況を、どれほど自分事として受け取るか」という共通の価値観があります。

だからといって、何でも早ければよいわけではありません。相手のことを考え抜いた結果、応答までに時間がかかることもあるでしょう。その遅さには、相手への敬意があります。

一方で、無関心や後回しから生まれる遅さもある。同じ「遅い」という現象でも、その中身はまったく違います。問われるのは時間の長短ではなく、その時間に相手への敬意があるかどうかです。

人を束ねる立場にいると、この差がよく見えます。同じ連絡を複数人に送れば、誰がすぐに反応し、誰が期限直前まで沈黙するのかが一望できる。最終的に全員が期限を守り、同じ水準の成果物を出したとしても、即座に反応した人には自然と安心感が生まれます。

能力の差というより、「この人に投げたものは、どこかで止まったままにならない」という信頼が積み上がるからです。

ただし、人を束ねる者は、周囲のレスポンスを見ているつもりになりますが、組織の中で最も見られているのは、その本人です。

誰の連絡にはすぐ返し、誰を待たせるのか。どの案件を拾い、どれを放置するのか。その振る舞いから、周囲は言葉以上に多くのものを読み取っています。

組織に観察席はありません。見る者もまた、常に見られています。

誰にとっても、人生は時間でできています。相手の時間を大切にすることは、お互いの人生を無駄にしないことにつながります。相手を不必要に待たせず、次へ進める状態をつくる。

即レスは、相手にも同じ速さを求めるものではありません。相手が早く返すかどうかとは関係なく、自分は相手の時間を粗末にしない。それはルールではなく、自分がどのような人でありたいかという選択です。

これは処世術ではありません。

人が何を大切にしているかは、言葉ではなく行動に表れる。即レスとは、そういう人間の本質にかかわる話なのです。

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