ニュースの論点No.267 祖業に振り回されない

 「AOKI、『着るだけで疲労回復が期待できる服』を発売 一般医療機器として届け出」202266日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「生地には温熱治療効果のある高純度セラミックが練り込まれている。体から発する遠赤外線エネルギーを吸収・輻射することで血行が促進され、ハリ・コリを軽減させ疲労回復を促す効果が期待できる」としています。

 

 当商品は部屋の中や就寝時などの使用を見込み、シンプルなデザインで上下合わせて6千円程の価格設定です。また、最近ではグンゼから機能素材を使った、「寝るT」という商品が発売されています。こちらは就寝時用で、NASAのために開発された調温素材を使用し、快適な睡眠をサポートするそうです。

 

これらは、いわゆるリカバリーウェアと呼ばれるカテゴリーの商品ですが、上記2社以外にも、10年以上前からさまざまなリカバリーウェアのメーカーが市場を形成しています。

 

 リカバリーウェアとは、着用することで疲労回復を促す衣類の総称です。着圧タイプ(体に密着させ、その圧力で疲労回復を図る)と、非着圧タイプ(特殊な機能素材の効果によって疲労回復を図る)があります。

 

 着圧タイプは主にスポーツなど体を動かした後、非着圧タイプは部屋着や就寝着として

使用すると効果的だとされています。また、「一般医療機器」として厚労省に認定されていると、第三者機関に測定等がなされているため、一定の効果が期待できます。

 

 さて、AOKIは主な事業として紳士服店をチェーン展開しています。ですが、紳士服、特にスーツの販売はコロナ前から減少傾向にあり、コロナ禍でさらに追い打ちをかけられ、相当な打撃を受けました。他の紳士服チェーンも同様で、各社は業績回復のために飲食店や雑貨・リペア等のノウハウを提供する企業とフランチャイジー契約を結ぶなど、事業の転換を図りつつあります。

 

 AOKIに関しては、子会社が展開する複合カフェ「快活CLUB」へのテコ入れを行っており、店舗数も前期だけで50店舗増やしています。現在AOKIは512店舗、快活CLUBは496店舗と店舗数で見ればほぼ変わらない状態となりました。

 

 紳士服の方でも、202011月発売の「パジャマスーツ」や今回の「リカバリーウェア」など、新たなカテゴリーの商品を開発し、V字回復に向けた脱スーツへの道を着々と歩んでいます。

 

 最近、街を歩いていても、電車に乗っていても、取引先でも、官公庁でも、スーツを着ている人は明らかに少なくなりました。コロナ禍でテレワークも定着しつつあることから、仕事着へのニーズの変化が早まっています。コロナ禍も3年目となりますが、職場以外、特に自宅での時間が増えたことで、よりカジュアルで機能的なものに対するニーズが高止まりしているのです。

 

 いずれスーツを専門とする紳士服チェーンは淘汰されていくでしょう。今はその過渡期です。私もアパレル店を経営していますが、紳士服でなくてもその空気を肌で感じています。厳しい時期だからこそ、先を見据え、祖業に振り回されない経営判断を心がけたいと思います。

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