ニュースの論点No.648 本業は何か

 「モス、営業利益98%減の衝撃 『手作り感』にこだわるジレンマ」2023530日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「モスバーガーが赤字に転落した。20233月通期の営業利益は前期比98.8%減の4100万円、最終赤字は31700万円」としています。

 

 業績悪化の要因として「原材料費の高騰や急速な円安によるコスト増が利益を圧迫した」ことが挙げられています。対策として期中に主力商品の値上げを実施するも、先述の通り最終赤字の結果となりました。

 

 ただし、値上げに関わらず既存店客数は前期比103.9%と増加し、客単価は99.9%と横ばいです。値上げしても客数が増え、客単価が変わらないのは矛盾を感じますが、例年行われる「季節ごとのキャンペーン」や「地域限定商品」の影響が大きいのかもしれません。

 

 さて、売上高に関しては20142018年まで650700億前後で推移、その後は右肩上がりとなり20193月期662億→20233月期850億と伸び続け、5年で28%伸長。粗利率は同期間で49.3%45.4%4%ダウン。ちなみに粗利率はこの10年間4751%の間で推移しており、233月期はこの10年で最も悪化した年と言えます。

 

 国内店舗数は20191319店舗(うち直営246)→20231245店舗(うち直営42)で全体としては5年で5%減。直営・FC店舗を合わせた1店舗当たり売上は9031万(20223月度)です。

 

 全社売上の内訳を見てみましょう。情報が確認できる2022年度3月期の有価証券報告書では、全社売上784億に対し国内モスバーガー事業が634億円で全体の8割を占めています(残りは海外やその他飲食)。国内モスバーガー事業の内訳は加盟店への卸売上高408億円、直営店売上198億円、その他で約28億です。

 

 つまり、全社売上の半分以上は「加盟店への卸売」です。それに加えて直営店売上が全体の4分の1で合わせると全体の約8割。加盟店のロイヤリティは月次売上の1%とされていますので全体の中ではかなり少額です。

 

 無論、店舗運営に関わるノウハウの提供や教育などがあってこその「モスバーガーブランド」ではあります。ただし、実際にキャッシュの多くを生み出しているのはパティやソース、トマトやレタス等、「加盟店に対する卸売」なのです。

 

 ちなみに、モスバーガーを展開する株式会社モスフードサービスは業種分類で「卸売業」になっています。この収益構造からすれば「卸売業」というのも頷けます。

 

 他方、有報によれば国内モスバーガー全店舗売上は1130億円で、比率は直営2割(198億):FC8割(932億)です。同様に仕入原価328億円を割り振ると65億:262億となります。

 

 加盟店には仕入262億に対し408億で卸しているので、「加盟店への卸売」での粗利は146億円、粗利率は35%となります。一般的な卸売業と比べれば少し高めの粗利率ですが、卸売業は基本的に付加価値が付けづらいので仕入の高騰はダイレクトに業績に響きます。

 

 一方の「直営店」の粗利は133億、粗利率は67%ですので、こちらは一般的な飲食店と同等の粗利率と言えるでしょう。

 

 モスバーガーの“卸売主体”ともいえるビジネスモデルは、急激な仕入価格の高騰に最も影響を受けやすい収益構造の一つです。今回の営業利益減少要因においても、「原価率増加にともなう粗利減少」が22億円と最も大きな数字で計上されています。

 

 単なるフランチャイズ型の店舗ビジネスとしてではなく、「どこが収益の核になっているのか」を知ることで、問題の本質がより浮かび上がりやすくなります。今よりもう一歩突っ込んだ「洞察」を心がけていきましょう。

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