
「洋菓子のモロゾフ、社名隠し最高益 百貨店に複数出店」2024年4月24日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「洋菓子メーカーのモロゾフが、あえて社名のモロゾフを打ち出さないブランドを立ち上げ、売り場を増やしている」としています。
「モロゾフは日本で最初にバレンタインの日にチョコレートを渡す風習を広めたとされる」そうで、バレンタイン関連だけで年間売上の2割(68億円)を占めています。これは強みである一方、原材料費の高騰などリスクも大きく、新たなブランド展開はリスクヘッジや業績拡大を目論んだ戦略と言えます。
また、あえてモロゾフというブランド名を出さず、色がついていない状態で展開することでこれまでとは異なる顧客を獲得できる可能性が高まります。もちろん認知度が低いことで苦戦する可能性も大いにありますが、積極的にリスクを取りに行くのは商売の基本です。攻撃は最大の防御ともなります。
最近では2023年9月、宝飾品ブランド「4℃」がブランド名をあえて隠した「匿名宝飾店」を原宿に期間限定でオープンしました。これはブランドイメージの刷新(好感度アップ)等の狙いがあったとされています。実際、アンケートでは好印象に変わった人は8割以上に上っています。
同じ時期、味の素はブランド名を伏せて自社の調味料「Cook Do」を使った麻婆豆腐専門店「極麻辣麻婆豆腐飯店」をオープン。消費者に先入観なく実際の味を体験してもらうためのマーケティング施策でした。
少し古い話になりますが、居酒屋大手のワタミは2010年代にパワハラや長時間労働問題が表面化し、ブラック企業の烙印を押され業績も悪化。ワタミブランドは壊滅的な打撃を受け、ブランド価値は風前の灯火となります。
これをきっかけに同社は「ワタミブランド」を捨て、主力ブランドの「和民」「坐・和民」を「ミライザカ」ヘ、もう1つの主力ブランド「わたみん家」を「三代目鳥メロ」へ転換しました。現在では、ワタミの面影はどこにもありません。
さて、ワタミの話は若干毛色が違いますが、いずれも「先入観や固定観念からの脱却」が共通項です。固まった顧客の頭の中に入り込む機会をつくるため、あえてブランドを伏せて匿名でアプローチする。
私たちの価値観は無意識のうちにかなり固まっています。日常生活で何を選ぶかはほぼ自動的に決められている。「あのブランドは私には合わない」と思ったら、まず翻意することはありません。つまり二度と買わない。
ブランドは強みにもなれば、裏返すと弱みにもなりえます。そのブランドをあえて外すことで無色透明にし、ついてしまったブランドイメージを刷新する。そして新たな顧客を開拓する。
生物に新陳代謝は必要不可欠です。同じように、会社にも、ブランドにも新陳代謝は欠かせません。固まったままだと「老化」が進みます。成長するために自ら壊し、新しくつくりあげていく。これは私たちの最も重要な仕事の一つです。

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