ニュースの論点No.766 40万円のバッグの価値

 「40万円のバッグを作るのにディオールはいくら払っていたか…イタリア当局が搾取的な製造業者を捜査」2024712日、BUSINESS INSIDER はこう題した記事を掲載しました。

 

 記事によれば、「イタリア当局が、LVMH傘下のディオールの高級ハンドバッグを製造しているサプライヤーを捜査した。捜査の結果、ディオールがバッグの製造に57ドルを支払い、2780ドルで販売していることが明らかになった。」としています。

 

 今の為替で言えば、業者に支払ったのは57ドル(約9100円)で、それを2780ドル(約444千円)で販売していたとのこと。なお、57ドルに皮革などの原材料費は入っていません。

 

 皮革については、一概には言えませんが、1個当たり高くとも23万円との情報もあります。ハイブランドの原価率は23割と言われている中、今回のディオールのバッグは原材料を加えた原価率が10%に満たないことになります。

 

 下請け業者は中国の企業で、機械の安全装置は外され、夜間や休日も働かされるなど労働環境は劣悪とも言える状況でした。

 

 バッグ1個が完成するまでの時間は不明ですが、全体像から見れば下請け業者が「搾取」されている状態と言って間違いないでしょう。物流や販売にかかる経費を差し引いても、ディオール側に残る利益は相当な割合になりそうです。

 

 世界の全ブランドが同じではないにしても、同様のニュースが定期的に配信されている状況を鑑みれば、大半が同じ構造になっているのは想像に難くありません。

 

 さて、世の中の商品にはすべて原価がかかっています。原価には原材料費と加工にかかる工賃、工場の光熱費や家賃なども加えられます。原価以外にも販売にかかる費用が加算され、1個の商品には相当のコストがかけられています。

 

 そして販売価格からコストを引いた分が利益になります。販売価格をいくらに設定するのかは基本的に自由で(独占禁止法や景品表示法に引っかからない範囲)、多くの商品は消費者が納得して買ってくれる金額に収斂していきます。

 

 ディオールのバッグも売れるからこその価格設定です。ただ、だからと言ってより安く作るために労働者側を搾取するのは論外です。企業は利潤を追求する側面がありますが、不当なやり方で永続させることはできません。

 

 ブランドに価値があると信じているからこそ、高い価格でも買うお客様がいます。ヴェブレン効果(見せびらかすために高価なモノを欲しがる心理)やスノッブ効果(限定品や希少性のあるモノに魅力を感じる心理)も影響を与えるものの、一応は価格相応の価値があるとして買われている。

 

 この点、ブランド側がモノづくりにおいて労働者を搾取するようなやり方を続けていては、価値そのものが棄損され、最終的には誰も買わなくなってしまうでしょう。

 

 ブランドを身につける側の責任もあります。価値観は一人ひとり違って当然ですが、「誰かを犠牲にして得られる価値」はいずれ破綻します。私自身も自戒の念を込め、改めて価値の本質がわかる人間を目指していきたいと思います。

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