ニュースの論点No.888 雑談は不要?

「リモートワークで減る「雑談」、若者は「なくても問題ない」 上司世代とはギャップも」2025917日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。

 

リモートワークの浸透により、職場での「雑談」が減ったという声を耳にすることが増えました。ある調査では、上司世代は「雑談が関係づくりに役立つ」と考える一方、若い世代は「なくても困らない」と答える人が多いという結果も出ています。

 

経営者の立場から見ると、この価値観のギャップは軽視できないテーマです。では、雑談は本当に必要なのでしょうか。

 

そもそも雑談とは、目的を持たず、余白の中から自然に生まれるコミュニケーションです。不要不急で、どうでもいいような話が多い。しかし、その力の抜けたやり取りの中にこそ、アイデアが生まれたり、相手への信頼感が深まったりすることがある。だからこそ面白いのです。

 

逆に「雑談をしよう」と目的化した瞬間に、それは雑談ではなくなり、かえって気まずさや押し付け感を生むことすらあります。つまり雑談は「作ろう」とするものではなく「勝手に生まれるもの」なのです。

 

タバコ休憩でのコミュニケーションは典型例でしょう。煙草を吸うこと自体が目的でありながら、その場で自然と情報交換や信頼構築が行われる。もちろん、喫煙者と非喫煙者との間に壁ができるなどデメリットもあります。つまり雑談は万能薬ではなく、環境や人間関係の副産物にすぎません。

 

ここで経営者が考えるべきは、「雑談をどう増やすか」ではありません。大事なのは雑談が自然に生まれるような環境づくりです。例えば、余白を持てる時間配分、心理的に安心できる職場の雰囲気。こうした土台があってこそ、雑談は副次的に立ち上がります。

 

そして、その前提となるのは、経営者自身やリーダーが一貫性ある言動を心がけ、約束を守り、人として信頼される存在であることです。信頼がなければ、どれだけ「雑談制度」を設けても表面的な会話しか生まれないでしょう。雑談を制度化するのは愚策です。むしろ雑談と感じさせない自然な関係性こそ目指すべきです。

 

若い世代が雑談を「なくてもよい」と感じるのも不思議ではありません。価値観や世代文化の違いから、雑談に意味を見いだしにくいのでしょう。ただし彼らが雑談を一切していないわけではありません。同世代同士では自然と雑談しています。要は「文脈が違う」のです。

 

経営者は「雑談が減った」と嘆くより、世代ごとの価値観を認めた上で、どうすれば信頼関係を築けるのかを考えるべきです。

 

結局のところ、雑談は目的ではなく結果です。信頼できる関係性と余白ある環境があれば自然と生まれ、なければどれだけ制度を整えても生まれません。経営者に求められるのは「雑談を強いること」ではなく、社員同士が安心して関われる土壌をつくることです。

 

雑談を目的にするのではなく、雑談が自然に芽吹く会社のあり方を目指すこと。それこそが、リモートワーク時代の人間関係づくりにおいて中小企業経営者が持つべき視点ではないでしょうか。

 

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