ニュースの論点No.924 仕事の品質は指示で決まる

AIも間違えた2026共通テストの問題。生成AIが得意の数学で満点を取れなかった理由」2026121日、東洋経済オンライン

 

「生成AI2026年の共通テスト数学で満点を取れなかった」というニュースが話題になりました。数学や推論を得意とする最新の生成AIであっても、日本の共通テストでは一部の問題を誤答したという内容です。一見すると、「やはりAIにも限界がある」「まだ人間の方が上だ」と感じた方も多いかもしれません。

 

しかし、記事を読み進めると、原因はAIの推論力不足ではありませんでした。問題文を画像(PDF)のままAIに与えたことで、文字認識の段階でズレが生じ、その誤った前提のまま正しく推論してしまった、というのが実態です。

 

日本語の問題文を機械が理解しやすい形式に整えたうえで再度解かせると、AIは正解にたどり着いた。つまり、間違えたのは「考え」ではなく、「入口」だったのです。

 

この話は、AIの話であると同時に、経営そのものの話でもあります。
AI
もそうですが、人間も、雑な指示では高品質なアウトプットは出せません。目的が曖昧なまま、前提条件も共有されず、「とりあえずやってみて」と投げられた仕事が、期待通りに仕上がらないのは当然です。

 

それにもかかわらず、結果が出ないと「能力が足りない」「センスがない」と評価してしまう。これは経営の現場で、日常的に起きていることです。

 

さらに厄介なのは、短絡的に原因を決めつけてしまうことです。売上が落ちれば営業の問題、利益が出なければ現場の努力不足、新規事業がうまくいかなければ市場が悪い。こうした判断は分かりやすい反面、本当の原因から目を背けてしまいます。

 

今回のAIの例も、「解けなかった=AIの限界」と結論づけていれば、入口のズレという本質には辿り着けませんでした。

 

そこに、経営者自身の先入観や思い込みが加わると、判断はさらに歪みます。「うちはこの業界だから厳しい」「若手は使えない」「地方では無理だ」。こうした思い込みは、事実の検証を止め、仕事の流れを見る視点を奪います。

 

仕事は、個々の作業や施策が利益を生むのではありません。
仕事の「流れ」そのものが、利益を生みます。
強みも戦略も、点ではなく流れ、つまり動画の中に宿ります。優れた戦略とは、きれいに並んだアクションリストではなく、入口から出口までが一貫してつながった流れです。

 

今回のAIの話も同じです。指示の出し方から、入力、認識、推論、回答までの流れを再確認したことで、問題の所在が見えました。経営者であれば、自社の仕事の流れを把握し、どこでズレが生じているのかを確認することが、問題解決の糸口になります。

 

そのために必要なのは、頭の中だけで机上の空論を組み立てることではありません。現場に、すべての答えがあります。実際に誰が、どこで、どの情報を受け取り、どう判断し、次に何を渡しているのか。この流れは、資料や会議室の議論だけでは見えてきません。

 

AIの性能を最大限に活かすには、人間ならではの「生の現場」と「生の感情」が、これまで以上に重要になります。違和感、迷い、引っかかり、ためらい。こうした感覚は、現場に立ち、人と向き合わなければ掴めません。AIは思考を加速させますが、思考の出発点は、常に現場にあります。

 

AIを使いこなすことと、経営を良くすることは、実はよく似ています。答えを急がず、流れを見直し、入口を整え、現場で確かめる。その積み重ねこそが、確かな判断と持続的な利益につながっていきます。

 

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