ニュースの論点No.970 スマホ農場の闇

“人為的にバズらせる” SNS操る「農場」ビジネスを取材 「テスト」と書かれただけの投稿が6分で100万回表示… 選挙で悪用の懸念も【報道特集】2026年6月27日TBS NEWS DIG 

最近、SNSの閲覧数や「いいね」を人為的に増やす、いわゆるスマホ農場の存在が報じられました。大量のスマホ基盤を使い、投稿のインプレッションや反応数を短時間で増やす仕組みです。

選挙や世論操作への影響が大きく取り上げられていますが、これは政治だけの問題ではありません。中小企業経営においても、ネット上の数字や評価をどう受け止めるかは、ますます重要な課題になっていると感じます。

いまは、いいね、フォロワー、インプレッション、コメント、レビューなど、さまざまな数字が可視化されています。一見すると客観的な評価に見えます。しかし、その数字は必ずしも実際の顧客の支持を表しているとは限りません。

お金や手間をかければ増やせる数字もあります。AIを使えば、もっともらしい投稿やコメントを短時間で量産することもできます。

もちろん、SNSで魅力を伝えること自体は必要です。特に飲食店や小売店、サービス業にとって、写真や動画、文章による発信は大切な集客手段です。

実際、私も最近、インスタグラムで知った飲食店に行きました。投稿では、料理はとてもおいしそうで、店内には活気があり、スタッフも感じがよさそうに見えました。

ところが、実際に行ってみると、印象は少し違いました。料理も接客も悪いわけではありません。ただ、事前に見ていた印象が良すぎた分、「思っていたほどではない」という感覚が残りました。本来なら普通に受け止めたかもしれない体験も、期待値が上がりすぎていたために、かえって落胆につながったのです。

ここに、SNS時代の経営の難しさがあります。

SNSは初回来店を作れる。
しかし、二度目の来店を作るのは、実際の体験である。

ネット上で良く見せることはできます。料理も、店舗も、人物も、実績も、ある程度は整えて見せられます。個人でも同じです。写真の加工や見せ方によって、画面上の印象と現実との間に大きな差が生まれることがあります。

問題は、良く見せることそのものではありません。発信には工夫が必要ですし、魅力が伝わらなければ選ばれません。ただし、実態を大きく超えて見せてしまうと、その分だけ現場が期待値を背負うことになります。

言い換えれば、発信が実態を追い越すと、期待値の借金が生まれます。

その借金は、その場でクレームとして返ってくるとは限りません。お客様は「インスタで見た印象と違いました」と面と向かって言ってくれるわけではない。多くの場合、何も言わずに帰ります。そして、二度目がありません。

期待値の借金は、クレームではなく、再来店率の低下として返済を迫られる。

これは、経営者にとって非常に重い問題です。初回来店が増えていると、発信が成功しているように見えます。しかし、その後の再来店や紹介につながっていなければ、実際には信頼を積み上げられていない可能性があります。

レビューも同じです。高評価レビューが多いからといって、必ずしも実態をそのまま表しているとは限りません。関係者が持ち上げることもあれば、逆に悪意ある第三者が評価を下げることもあります。ネット上の評価は参考にはなりますが、それだけを経営判断の土台にするのは危うい時代になっています。

だからこそ、経営者が見るべきものは、表面的な数字だけではありません。初回来店数だけでなく、再来店率を見る。問い合わせ数だけでなく、成約率を見る。レビューの星の数だけでなく、実際のお客様の反応を見る。SNSの反応だけでなく、現場の空気やスタッフの実感にも目を向ける。

発信は必要です。見せ方を磨くことも大切です。しかし、見せ方が過ぎれば、実態との落差を生みます。足りなければ選ばれませんが、過ぎれば失望されます。

まさに、過ぎたるは猶及ばざるが如し。

これからの経営では、単に「どう見せるか」だけでなく、「見せた期待に現場が応えられているか」を考える必要があります。SNSで選ばれることと、実際に満足してもらうことは別の問題です。

ネット上の印象を整える前に、現場の体験を整える。

その順番を間違えないことが、これからますます大切になるのではないでしょうか。

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