コラムNo.625 本末転倒

 先日、某アウトレットモールに行ってきました。私はアパレル業界に携わって25年になりますが、アウトレットは同じ業界ながら接点が少なく、直接来場するのも相当久しぶりです。目的は視察半分、買い物半分といった感じでしょうか(あっさり言えば別の要件のついでです)。

 

 で、感想を正直に言えば「買いたいものがない」です。もちろん、好みのものがない、あるいはサイズや色がない…などは買い物でよくある日常です。そうではなく、そもそもバリエーションが少ない。一見、並んでいる商品は多く見えるのに選べない。「アウトレットモール」ですから、ある程度は品揃えに難があるのはわかっていたつもりですが、想像以上に何もない。

 

 コロナ禍で在庫の圧縮をしていたのは要因の一つでしょう。アウトレットの醍醐味である「正規品の割引販売」はかなり少ない印象で、どこを見てもアウトレット用に開発された安価な量販型商品が並びます。

 

 一昔前からアウトレット用商品は割と多く陳列されていました。今回はそれがさらに増幅し、店舗のラックや棚を占拠していました。アウトレット用商品は安価でも利益を出せるようにかなり原価を抑えています。そうすると当たり前ですが、安っぽい生地、粗雑な縫製、簡易なパターンとなり、商品自体の魅力はなくなります。

 

 アウトレット用だからそれでいいのかもしれません。満足する人も多いのでしょう。実際、アウトレット市場は伸び続けており、2020年では約8000億円と試算されています。

 

 ちなみに日本では市場に出回るアパレル製品の半分、10億着以上が売れ残っています。そのすべてがアウトレットモールに行くわけではなく、一部は正規品として翌年に持ち越し、一部は二次流通業者(バッタ屋)に放出、一部は廃棄…など在庫品はさまざまな流通の過程を辿ります。毎年多くの売れ残りが出るとは言っても、アウトレットの在庫として流通するわけではないのです。

 

 この状況では、誰が考えても拡大を続けるアウトレットモール、また増え続ける店舗に供給する商品が不足します。結果、アウトレット用商品が開発され、現在では店内多くのスペースに陳列されているのです。アウトレット用商品の大きな特徴としては「どこのブランドも似たような商品」になっていることです。

 

 これは正規品を扱う都市部のアパレルブランド店舗でも見られる現象で、つまりは外注です。各ブランドが自社でデザインせず、商社やOEM業者に丸投げするとこのような現象が起きやすくなります。

 

 「ブランド同士がデザインをパクる」ことも日常茶飯事で、アパレル各社は売れている商品があれば、一般消費者が想像している以上に簡単にパクります。こうして市場には似たような商品が並べられ、店舗外観をはじめ商品や接客スタイルまで画一的な風景が全国に広がっていくのです。

 

 するとどうなるか。選びたいものがなくなります。どこの店に入っても似たようなレイアウト、似たようなコーディネート、似たような商品、似たような接客…。「服を選ぶ喜び」はどんどん削られていきます。

 

 加えて、アウトレットモールでは服が粗雑に扱われているように感じました。表現が極端になりますが、個人的には、「洋服の墓場」という言葉が頭に浮かびます。それをアウトレットモールのリゾート感でごまかしている。

 

 働いているスタッフも何だか疲弊し、まったく楽しそうではない。買い物客も同様。全部がそうとは言いませんが、個人的にはそんな光景が強く印象に残りました。

 

 在庫を効率的に売り切るためにアウトレットを増やし、さらにムダな在庫を増やす。こんな「本末転倒」な事態は多くの業界で見られるでしょう。

 

 アウトレットモールの場合、地域経済や各社の収益状況は多少良くなるのかもしれません。ただ、負の側面があることも事実です。

 

 経営者の皆さん。自社においても全体を俯瞰しながら多面的に考え、大きな負を招く「安易な拡大」をしないよう留意しましょう。

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