ニュースの論点No.626 思い込みの怖さ

 『「百貨店の利用者は中高年ばかり」は思い込み? そごう・西武がAIカメラで発見した意外な利用客』202339日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。記事によれば「そごう・西武では、エッジAIカメラを使って客層の解析を進めている。そこで見えたのは、若い世代の来店率が予想以上に高いことだった。」としています。

 

 大半の百貨店は50代以上の売上が中心で、そごう・西武の現場スタッフも「30代以下の来店は全体の1割ほど」と思っていたそうです。しかし実際、AIカメラで分析したところ、その3倍の約3割を30代以下が占めていたそうです。

 

 この結果を受け、そごう・西武では30代以下の顧客に向けた施策を実施。実際に購買行動の変化が現れ、フロアの回遊性も良くなっているそうです。今後は新たな施策立案や、テナント向けに人流データの提供による売上向上、館の資産価値向上につなげていくとのこと。

 

 今回のような「思い込みによる現状認識のズレ」は日常的に起こっています。「人は見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞く」性質があります。若いお客が目の前にいるにもかかわらず、〈お客だと思っていないため〉情報として認識されず、いないことになってしまう。

 

 私たちが思っている以上に「思い込み」や「先入観」は強い力を持っています。わかりやすい例で言えば、誤診断や勘違いで病気でもないのに体は衰弱し(ノセボ効果)、薬でもないのに3割の人には効いてしまう(プラセボ効果)。

 

 人生経験が長ければ長いほど、思い込みや先入観も増えていきます。ただ、その大半はうまく機能しています。むしろ短時間でも間違った判断を下さない基準として、日常生活で大きな役割を果たしています。これは脳が常に学習し、省エネモード(ムダなエネルギーを使わない)で通常運転するための機能です。

 

 一方で、今回の百貨店のような「ズレ」が生じる場合もあります。これまでの経験とは違った事実が現れるとうまく対応ができません。結果、「自分が見たい現実を見る」状態になり、場合によっては誤った判断を下す要因になります。

 

 この思い込みや先入観に加え、「選択的注意」がさらに影響を与えます。「見えないゴリラ」と呼ばれる実験では、動画を見て「数名が行っているバスケットボールのパスの回数を数える」という課題が出されます。この動画では、パスを回す人の真ん中をゴリラの着ぐるみが堂々と通るのですが、大半の人はゴリラに気づかないそうです。

 

 つまり、見る対象に集中しすぎると、それ以外のことに気づかず見過ごしてしまう。百貨店の例では、「思い込み(若い層はいない)」プラス「選択的注意(重要顧客にフォーカス)」でいるはずのお客が消えてしまったのです。

 

 さて、皆さんは「目の前の事実」に見過ごしている点はないでしょうか。自分が見たい現実だけを見てしまっていないでしょうか。アフターコロナは始まっています。ぜひこの機会に、ゼロベースで現状認識をアップデートしてみましょう。

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