コラムNo.631 ハンマーでネジを打つ

 「ハンマーを持てばすべてが釘に見える」…皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。“欲求5段階説”で有名なマズローが著書の中で言及している言葉で、「マズローのハンマー」とも言われています。

 

 これは経営者や専門家にもよく見られる現象です。自分が持つ知識やノウハウ、成功体験が万能と思い込み、目の前の問題をすべてそれによって解決しようとする状態です。

 

 特に自分が気に入った「新しい道具(知識、ノウハウ等)」を手に入れた時、何でもその“素晴らしい道具”によって解決できると思い込んでしまい、必要ない場面でも使ってしまう…。これは誰もが陥りやすい落とし穴だと思います。

 

 「マズローのハンマー」は言い換えれば「手段の目的化」であり、これには多くの人が陥りがちな「確証バイアス(都合の良い情報のみ集め、先入観を強化)」が強く影響しています。

 

 要するに「人は見たいものしか見ない」ので、「道具の過剰な評価」につながり、「道具のため」に状況を利用する。まさに手段の目的化と言えます。

 

 一方、個人的には「ハンマーがないから釘が打てない」という逆説的な真理の方がより重要だと考えています。ハンマーがないと解決できないと思い込み、他の方法をまったく考えず諦めてしまう。

 

 状況はマズローのハンマーの真反対ですが、「自分の正当性を証明したい」という同様の心理状態です。ただし、こちらの方が諦めて何もしない分、問題は大きいと感じます。

 

 「これさえあれば解決できる」「これがないから解決できない」はいずれも確証バイアスや先入観からくる「視野狭窄」や「固定観念」が悪影響を与えています。

 

 「この人事制度を導入すれば、確実に定着率が上がる」「補助金がなければ新規事業参入は無理」「あの社長さえいれば、子会社の経営は必ず上向く」「専門人材がいないので商品開発は諦めざるを得ない」…果たして本当にそうでしょうか?

 

 翻って、そもそも「ハンマーを使うために釘がある」のではなく、「釘を打つためにハンマーがある」のです。会社の問題も同様で、解決策を使うために問題があるのではなく、問題を解決するために解決策があります(当たり前ですが)。

 

 そして問題(釘)は状況によってすべて違います。そもそも釘ではないかもしれません。手持ちのハンマーを使っても何ら状況は改善しない可能性があります。

 

 経営者の皆さん。「ネジ」を「釘」と勘違いして「ハンマー」で打ち付けていないでしょうか。そのまま打ち続けると、土台が壊れてしまうかもしれません。道具選びや使い方は、間違うと大けがをします。

 

 この点、まずは手段ではなく「目的(何のために)」を常に考えてください。手持ちの知識やノウハウは万能ではないことを改めて認識し、しなくてもいい失敗は回避するようにしましょう。

 

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