
先日、ある飲食店経営者の方から「忘年会の客数を倍増させたい」とご相談がありました。ようやくコロナ禍も落ち着いて客足が戻りつつある中、さらなる攻めの一手でこれまでの厳しかった状況を挽回したいとの思いを感じます。
ここで相談内容を聞くや否や、いきなりアドバイスする専門家もいらっしゃいます。しかし私自身はあえて時間をかけて丁寧なヒアリングを心がけ、より本質的で効果的な提案につなげるために正確な状況把握を行います。
今回のご相談でも、これまでの収支はもとより、客数や客層、客単価、広告内容や反応率などのヒアリングを重ねていくと、看過できない大きな問題点が出てきました。
忘年会コースの価格ではまったく利益が出ていないのです。ほぼ赤字。経営者曰く、「お客様に美味しいものを安く提供し、喜んでいただきたい」「一度お店に来ていただき、リピートしてもらうための価格設定」とのこと。
気持ちはわかりますが、当店は年間の収益状況も芳しくありません。そんな中、現状のまま忘年会の客数を倍増させると、確実に自分で自分の首を絞める状況に陥ります。しかも、忘年会に来たお客様はそこまでリピートもしていない。
優先順位の圧倒的第1位は「価格改定」です。つまり値上げ。これしかありません。ちなみに忘年会コースの価格設定は通常コースを値引きした金額です。ですので、まずは通常コースを値上げする。
結局、通常コースを1000~2000円ほど値上げし、安すぎた忘年会コースでも利益が出る価格設定に変更。
そもそもコースは忘年会や歓送迎会時のみの需要で普段は誰も価格を気にしていません。お客様からは「普通だったら倍以上の値段でもおかしくない」との声がいくつも上がっています。加えて、量的にも多いため、食材を持ち帰るパターンも多々見受けられる。
つまり、「過剰サービス」の状態です。厳しい言い方をすれば単なる「自己満足」。しかも赤字という自己犠牲のもとにサービスを提供している。お客側にとって一時的にはいいことかもしれませんが、このままでは当然長続きせず最終的には不幸な結果が待っています。
「お客様に嫌われたくない」「お客様が離れるのが怖い」。内心ではさまざまな気持ちが渦巻いていると思いますが、いい人だけで商売は成り立ちません。気が進まない決断もしなければならない。
というより、値上げは決して「悪」ではありません(ぼったくりは除く)。適正価格であれば、堂々と値上げして構わない。ただし、その価値を伝える努力を怠らないようにすることが肝要です。
この点、怠慢している会社が少なくないと感じています。「言わなくてもわかる」と謎の自信を持ち、情報発信を怠っている。これは非常にまずい状況です。お客様は「言わないとわからない」のが当たり前です。
今回の飲食店に対しても価格改定に合わせ、メニュー表、店内POP、接客、SNS等での「価値の伝達」を行うようアドバイスしています。「その価格以上の価値」があることを伝える努力はいくらやってもやりすぎにはならない。
お客様はその価値がわかると満足度も上がり、納得してお金を払うことができます。加えて高価格の商品にはそれだけで価値を感じる一面もあります。
経営者の皆さん。今の価格で利益は出ていますか? もう一度見直し、改めて価値の言語化をしてください。お客様はあなたの商品の良さを知りたがっています。

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