コラムNo.823 顧客が欲しいのはドリルでも穴でもない

ここにハサミを探している人がいます。この人と一緒にハサミを探すのも親切ではありますが、「ハサミを使って何をするのか」を聞いた方がより早く、より良い解決策を確実に提案できます。

 

目的を達成するための手段はひとつではありません。「紙を切る」のはハサミでもカッターでも、あるいは手でもいい場合があります。

 

さらに目的の深掘りをしてみましょう。

 

そもそもなぜ「紙を切る」必要があるのか。メモを書いて渡すため。あるいは領収書を切り分けるため。はたまたクジをつくるため。紙を切る先に、さまざまな本来の目的が表れてきます。

 

もっと深掘りしてみましょう。なぜ紙にメモを書いて渡す必要があるのか。領収書を切り分けなければならないのか。クジをつくる必要があるのか…。

 

目的次第では、メモはスマホあるいは口頭でも済むかもしれません。領収書はデータで送ることも可能です。クジも紙を使わない別のやり方は多数存在します。つまり、「紙を切らなくてもいい」解決策が山ほどあるのです。

 

代替できる道具や、そもそもの目的に沿って違うやり方を提案する。その人の目的を達成するには、今欲しがっているものでは“ない”方がよりスムーズに行くことも少なくありません。

 

マーケティングにおいて、「顧客が欲しいのはドリルではなく穴である」という言葉があります。ホームセンターに買い物に来た顧客が店員に「ドリルはないか」とたずねたところ、あいにく品切れ。店員が「ありません」というと顧客はそのまま帰ってしまった。

 

この際、店員はもっと深掘りして、ドリルを使ってなにをするのか、何のためにどんな穴を開けるのかを聞くべきで、場合によってはドリルではなく「キリ」や「穴の開いた板」を勧めることができたはず。というのがこの話の全体的な内容です。

 

ですが、私はこの話の内容だけでは不十分だと考えています。たとえば目的が「壁にフックを取り付けるため」であったとすれば、もっと深掘りし、「なぜ壁にフックを取り付ける必要があるのか」を聞くべきです。

 

その目的が「手持ちのバッグや帽子が多くなり、掛ける場所をつくるため」であるとすれば、穴を開けずに済むフックの提案や、今ある収納を活用する方法、あるいは不要なモノの買取りサービスの提案ができるかもしれません。

 

この顧客にとって本来の目的は「モノを整理し、スペースを有効活用したい」ひいては「広い空間で快適な生活を送りたい」ことがより本質に近いでしょう。

 

目的に適った「最適な提案」はお客様から非常に喜ばれます。それが顧客自身では考えつかぬことだったとしたら、よくある表面的な提案と比べ、相手に対する感謝と信頼は倍増します。

 

経営者の皆さん。表面的な問題の解決で満足していないでしょうか。顧客が抱える問題の先にはもっと本質的な問題、つまり「本来の目的」が隠れている可能性があります。顧客一人一人に丁寧な傾聴で深掘りし、最適な提案を心がけましょう。

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