コラムNo.989 まず一人で考えろ

先日、ある会議にオブザーバーとして参加しました。

テーマは、今後の取り組みについてアイデアを出すこと。社長がファシリテーターを務め、参加者がその場で自由に意見を出すスタイルでした。

ところが、よく話す人は好きなように話し、ほとんど発言しない人もいる。話題はあちらこちらへ飛び、社長自身も議論に加わって自分の意見を話し始めます。誰も発言の偏りを調整せず、議論を整理する人もいません。

時間だけが過ぎていきました。

こうした会議を見るたびに思います。

そもそも、なぜアイデアを出すために人を集め、そこで初めて全員に考えさせるのでしょうか。

■みんなで考えれば、いいアイデアが出るのか

「三人寄れば文殊の知恵」と言います。

確かに、一人では思いつかなかったことを、他人との対話から思いつくことはあります。しかし、だからといって、最初から複数人で話しながら考える方法が最も生産的とは限りません。

ブレーンストーミングに関する研究では、複数人が同時に話し合うよりも、それぞれが一人で考え、後からアイデアを持ち寄った方が、アイデアの量や質で優れる傾向が繰り返し指摘されています。

考えてみれば、それほど不思議な話ではありません。

誰かが話している間、他の人は待たなければならない。自分の考えをまとめている途中で、別の人の話が入ってくる。最初に出された案に思考が引っ張られることもあります。

そして何より、こうした会議では「その場ですぐ話せる人」が有利です。

考えたことを即座に言葉にできる人。人前で話すことに抵抗がない人。強く自分の意見を主張できる人。

しかし、発言の速さとアイデアの質は同じではありません。

じっくり考えてから話す人もいます。他の可能性まで考えてから意見を出したい人もいる。その場では言葉にしなくても、頭の中ではかなり深く考えている人もいます。

■発言しない人は、本当に何も考えていないのか

会議で一言も発言しない人が、「何のために参加しているのか」と批判されることがあります。

もちろん、本当に何も準備していない人もいるでしょう。

しかし、それだけではありません。

上司と違うことを言いにくい。すでに話している人に遠慮する。自分の考えに確信が持てない。「ここでは言わない方がいい」と判断する。

組織行動の研究でも、人は意見を持っていても、評価や人間関係への懸念、「言っても変わらない」という感覚などから発言を控えることが知られています。

つまり、

「発言していない=考えていない」

とは限りません。

むしろ、会議のつくり方によって、せっかく参加している人の知恵を表に出せていない可能性があります。

■アイデア会議が「バトルロイヤル」になるとき

ここでファシリテーターの力量も大きく影響します。

誰が話し過ぎているのか。誰が発言していないのか。論点がずれていないか。上司の意見に全体が引っ張られていないか。

本来、ファシリテーターはそうした場全体を見ながら、必要に応じて軌道を修正します。

この機能がなければ、「自由に話してください」は簡単にバトルロイヤルになります。

発言の早い人、声の大きい人、立場の強い人が次々に意見を出し、それに別の人が乗っかる。その間に、他の人は発言するタイミングを失っていきます。

最終的に残るのは、一番よいアイデアではなく、一番強く主張されたアイデアかもしれません。

さらに厄介なのが「集団浅慮」です。

集団の中で一つの方向性が見え始めると、違う考えを持っていても「今さら反対するほどでもない」「社長もそう言っているし」と異論を飲み込むことがあります。

誰も反対しない。

すると、「みんなこの案に賛成している」と受け取られる。

しかし、本当に全員が納得しているのかは分かりません。

人を集めただけで、多様な知恵が集まるわけではないのです。

■会議室に入ってから考え始めない

では、どうすればよいのか。

私は、アイデア会議では順番を変えた方がよいと思っています。

まず、テーマを事前に伝える。

「新しい顧客を増やす方法を5つ考えてきてください」

「この商品の新しい使い方を3つ考えてきてください」

など、問いを明確にして、一人で考える時間をつくります。

そして会議では、まず全員が持ってきたアイデアを出す。必要であれば、誰の案か分からないようにしてもよいでしょう。

その後で、似たものをまとめる。組み合わせる。別の視点を加える。さらに広げる。そして最後に評価する。

「一人で考える → 持ち寄る → みんなで広げる → 評価する」

という順番です。

集団で考えることが悪いのではありません。

問題なのは、一人ひとりが自分で考える前から、集団で考え始めることです。

会議に人を集めることと、人の知恵を集めることは違います。

せっかく何人もの人が集まるのであれば、声の大きい一部の人の思考を増幅するのではなく、それぞれが持っている知恵を一度きちんと場に出した方がいい。

アイデア会議は、会議室に入ってから考え始めない。

その方が、「みんなで考える」ことの本当の価値を生かせるのではないでしょうか。

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