ニュースの論点No.744 歴史から学ぶ

 「メニューたった3種類で急成長『鰻の成瀬』 東京チカラめし、いきなり!ステーキを反面教師にできるか」2024429日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「20243月には、1号店をオープンしてからわずか1年半で100店を突破。出店のスピードはさらに加速している」としています。

 

 最近では「毎週、6店くらいずつ新規オープンしている」そうで、今年中には350店に迫る勢いとのこと。北海道から沖縄まで全国に広がっています。メニューはうな重(松竹梅16002600円)のみで、瓶ビールなど飲物が少し置いてある程度のミニマルな運営スタイルです。

 

 店頭では誰でもできる簡単な作業がほとんどで高度な技術(職人)は必要なく、一気に展開できる仕組みが出来上がっています。2023年の実績では、平均月商400万円、最も好調な千葉店は1100万円とされています。

 

 条件面では「初期投資は加盟金150万円、保証金50万円、研修費40万円、開業サポート費50万円、専用機材約100万円。内装の指定はなく、居ぬき物件で十分に開業できるため、物件取得費を含めると合計700800万円で開業可能(202310ビジネスチャンスHPより抜粋)」となっています。

 

 また、「原価率は40%と高めだが、人件費は20%、家賃は10%以下に抑えられる。ロイヤリティ10万円+4%など、諸経費を差し引いた営業利益率は1520%(202310ビジネスチャンスHPより抜粋)」とのこと。

 

 鰻という食材で勝負する全国的フランチャイズチェーンは珍しく、今後の動向が注目されます。ただ、経営者の挑戦は非常に素晴らしいと思う一方で、単品業態のFCで一気に拡大する展開は常に不穏な空気をはらみます。

 

 記事タイトルにもあるとおり、ステーキや丼もの、唐揚げ、食パン、タピオカ、大福など一気に拡大し、同じ角度で落ちていった業態は枚挙に暇がありません。これらに共通する衰退の要因を一言でいえば、「飽和」です。

 

 自社の出店に加えて他社も追随し、短期間で店舗数が激増する。その結果、物珍しさや特別感はなくなり、どこにでもある中途半端な味と価格の商品が大量に出回る。こうなると「飽き」が転じて「嫌悪感」が生じ、大半の人の足が遠のきます。

 

 飽和を避けるために自社が出店数を抑制しても、他社が店舗を増やすので止める術はありません。火が燃え広がるごとく、市場を焼き尽くすまで際限なく広がります。

 

 「流行りモード」から「廃りモード」になると復活は容易ではありません。ほぼすべてのケースで一旦市場が消滅します。その後、また新たな業態が出てきてはなくなることの繰り返しです。

 

 他方、先行者利益を狙って初期から参入し、ある程度利益を得て早々にやめる事業者の話も聞きます。しかしながら、市場から退くタイミングは相当難しく、同じやり方で毎回利益を残すのはかなりの経験と能力が必要になるでしょう。

 

 いずれにしても、やり方は自由で正解はありません。むしろ大半はやらなければわからないことばかり。理屈で説明できるのはよくて2割程度で、その先はセンスや運が大きく作用します。

 

 この点、私たちにできるのはその2割を可能な限り咀嚼吸収し、身につけたうえで行動することです。世の中の大半は先人が過去に行ってきたことが理屈(経営ノウハウ)として積み重なっています。

 

 自分自身の失敗から学ぶことも大事ですが、ムダな失敗を防ぐためには勉強も必要です。安易な参入の前に、過去にはどんなことがあり、どのように歴史となったのか。ぜひ自分で調べてみましょう。必ず大きな気づきがあります。

    今週の経営コラムを無料でお届け 無料メールマガジン登録はこちら
    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!

    コメント

    コメントする

    目次