
「「残業キャンセル界隈」名乗る若者が増加中…… 上司はどう向き合うべき?」9月8日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。
記事タイトルの通り、近年SNS上で「残業キャンセル界隈」という言葉を目にするようになりました。定時になると仕事が残っていても帰宅する若者を指す表現です。背景には、働き方改革やワークライフバランスの重視、SNSでの共感文化などがあります。
若手社員が「残業をしないこと」に安堵を求め、同じ価値観を持つ仲間とつながりたいという心理は理解できなくもありません。過去の日本企業が抱えてきた「長時間労働の美徳」が行き過ぎていたことも事実であり、その反動としてこうした言葉が生まれてきたのだと思います。
一方で、この現象を単に時代の流れと片づけるのも短絡的です。私自身の見方を率直に申し上げれば、「残業キャンセル界隈」はやはり甘えの側面が強いと感じます。なぜなら、その行動が成り立つのは、結局ほかの誰かが尻拭いをしているからです。
チームの一員である以上、自分の業務を途中で放棄して帰れば、同僚や上司がカバーすることになります。つまり「自分だけが良ければいい」という姿勢であり、これは組織にとってフリーライド(ただ乗り)の構造にほかなりません。
もちろん、家庭環境や体力的な特性、あるいは育ってきた時代背景によって「残業はしたくない」と思う理由はさまざまでしょう。共感できる部分もあります。
しかし現実的に考えれば、どんな職場でも緊急対応や顧客の都合で残業が必要となる瞬間はあります。残業が常態化するのは望ましくありませんが、残業そのものが絶対悪というわけではないのです。
むしろ、限られた時間のなかで成果を出すために全員が工夫を凝らし、それでも必要な場合には一時的に残業を受け入れる。この柔軟さこそが組織の信頼を守る姿勢ではないでしょうか。
企業側にも責任があります。残業を前提としたビジネスモデルを見直し、効率化や仕組み化を進める必要があります。人手不足の時代だからこそ、限られたリソースで成果を出せる体制づくりが欠かせません。
また同時に、個人が「成果を果たしたうえでムダな残業をしない」努力を怠ってはいけません。成果を置き去りにしたまま「残業キャンセル」を掲げれば、それは働き方改革ではなく、単なる責任放棄に過ぎないのです。
「残業キャンセル界隈」に共感する若者を頭ごなしに否定する必要はないと思います。むしろ、なぜそう感じるのかを丁寧に理解し、健全なワークライフバランスへ導いていくことが上司や経営者の役割です。
そのうえで、成果を出し切らずに帰る行動は、いずれ自らの成長機会を奪い、信頼を失うことにつながることを伝えていくべきです。
本当の意味でのワークライフバランスとは、成果と責任を果たしたうえで、私生活を充実させることにあります。
残業をしないこと自体を目的化するのではなく、効率的に成果を出し、必要なときにはチームの一員として踏ん張る。そんな姿勢を育てることが、これからの時代における「働き方改革」の核心ではないでしょうか。

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